普通ならば1巻、ボリュームが大きくても上下巻で完結する「ライト」ノベルと
しての常識を打ち破り、6冊で一つの巨大な話が終わる構成は、ハードカバーで
出されてもおかしくない内容です。
著者があえてライトノベルレーベルでこの作品を出した理由はおそらく、普段
ハードカバーを手に取らない中高生世代にこの話を読んでもらいたかったせいで
はないでしょうか。
また逆に、ライトノベルだからと敬遠している人たちにも読んでもらいたいとい
う思いが伝わってくる気がします。
群像劇の体裁をとった一人称の連続は、読み始めこそ話に入り込みにくいかもし
れません。読書慣れしていない友人に勧めたところ、「読みにくい」とも言われ
ました。
ですがメインキャラクターとなる15人の人物像を把握した瞬間から、本領は発揮
されます。
会ったばかりの見知らぬ他人にすら手を差し伸べる枯野。自殺を止めてヒーロー
になろうとするマーチ、他人の自殺など止める気もない笹浦、そして顔も知らな
いネットの知り合いと一緒に自殺しようと目論む徳永。
一人称から伝わる個性は、ページが進むたびに変化していきます。
顔すら知らない相手と携
帯電話で繋がってしまう、という文明の利器によるやり
とりも見事。2005年の時点でこんなにも携
帯電話は普及していたのだと思い返す
場面が多々ありますので、2010年の今、もし同じことが起こったら。と想像して
みるのも楽しかったです。
1巻は、自殺メール騒動が次第に波紋を広げていくのと同時に、登場人物の紹介
に徹した巻です。ジェットコースターで言えば発進直後です。
今後の内容を思えば、ぜひ6巻セットで読んでもらいたい小説としてお薦めします。