ミステリーを中心に読んでいたので、このような企業小説というか、サラリーマン小説の類は読む機会がなかった。テレビで驚異の視聴率をあげた「半沢直樹」を見てハマり、当然の流れで原作本に向かったのだが、これがじつに面白い。
テレビは最初から見ていなかったので、雰囲気はつかめても詳細は判らなかった。その意味でも本は緻密に各人の性格、性質まで描かれていて面白かった。花がテレビのような花ではなく、多少のいやらしさがあり、これは半沢も同じで、日常的にボルテージが高いわけではない。こういった小説の地味なところにリアル感があり、読物として成功している。
後半になって、デフォルメされたテレビとの違いが顕著になってくる。父親は死んでいないし、黒崎も結局出てこないが、これはこれで許容範囲だろう。
私は関西人なので、舞台が
大阪というのも有り難い。梅田の地下街の居酒屋で、半沢が飲んでいるところなど、私も横で飲んでいそうな親近感が湧くし、ホテルのバーは行った事があるので、あそこなら、そうだなと納得してしまう。また、下手な
大阪弁を竹下に諭されるところは、テレビの為の脚本かと思ったら、実際に小説に出ていたので大笑いした。
しかし、私はテレビからの流れで原作本に辿り着いたが、テレビを見る前から面白いと感じていた読者は当然居るわけで、その方たちの先見の明には心から敬意を表したいと思う。
池井戸潤は江戸川乱歩賞と
直木賞の両方を受賞しているので知っていたが、残念ながら今まで読むまでには至らなかった。しかし、江戸川乱歩賞だけなら不安はあるが、
直木賞も取った作家の力量は、桐野夏生、藤原伊織、東野圭吾然りで、これで裏切らない作家だと証明出来たのではないだろうか。
ただ一点。「オレたちバブル入行組」という
タイトルは座りが悪い。これだとバブル入行組以外には興味が持てない。ヒットしたからいうわけではないが、ここは「半沢直樹」でしょう。少なくとも、いったい何者やというインパクトがある。従って★ひとつ減点。
裏
新宿を徘徊する性欲むき出しの
ハイエナも、やはり愛が欲しいんだなと考えると泣ける。
そして、買われる女の気持ちはやはりわからない。今度はハイジアのたちんぼに逆インタビューしてほしい。