発売禁止になったLPを持っているので、自家用にいつかCDに復刻しようと考えていた。今回の復刻で自力での解決が不要になったが、改めて当時を思い出すきっかけになった。 放送禁止歌 関連情報
このシングル「放送禁止歌」に収録された3曲の楽曲は5thアルバム「残照」からのシングル・カットではなく、歌詞の一部に放送禁止用語が含まれていたためにやむなく自主制作(インディーズ)扱いで発表したものだ。アルバム・ヴァージョンには修正が施されているがこちらは無修正版。汚いものにはふたをせよ、というこの国の風潮と規制に対し、この誇らしげな「アジアの汗」の力強さはないだろう。生き生きとしたストリート・ミュージックのような佇まいが明るく地面を揺らし、光を照らす。サビでリズムが変わった瞬間に高らかで誇らしげな彼女の歌が至福の時を与えてくれる。もう一方の「家なき人」に至っては、もはや寺尾紗穂が奏でるソウルミュージックのよう。彼女は70年代のアーティストではなく、今を生きる稀有なシンガーだということを証明しているナンバー。バンドサウンドと絡む躍動したピアノがあまりに素晴らしい。アルバム未収録の「竹田の子守唄」は赤い鳥のカバーでゆったりとしたリズムの中、アコーディオンが物憂げに響く。 「放送禁止歌」 関連情報
ここ20年来捜し求めていた「放送禁止歌」オリジナル版が40年ぶりに復刻されましたので、とりあえず感想を! 山平和彦さんは1952年秋田生まれ、そして、2004年に亡くなっています。70年URCから「7月21日早朝に」でデヴュー、72年2月キング・レコードから「放送禁止歌」でメジャーデヴュー、同年4月に同名のアルバムをリリースします。 タイトル曲の放送禁止歌は、歌詞カードを見ればわかりますが、殆どが漢字4文字で構成されていて、言葉の遊びを狙った歌かなという気がしますが、なにしろタイトルがタイトルですから、文字通り放送禁止になってしまいます。そして、8:月経、9:大島節 の歌詞がわいせつということでアルバム自体が発禁、回収になってしまいます。 月経は、ナチの収容所に入れられた女性が、月に一度訪れる月経で自分の生を認識するという、野田寿子の詩に歌をつけたスロー・バラード風のフォークでこれのどこがわいせつなのかなと思います。大島節は、民謡らしいですが、歌詞に、しましょ、しまりよい、茶うす、横取り、等の言葉があり、これが引っかかったのかなと思います。 アルバムを通して聴きましたが、殆どがギターのみのフォーク・ソング、或いは民謡を採譜したものです。民謡には尺八が使われているものもあります。アルバム自体はこの時代背景を反映したもので、こんなこと言ったら言ったら怒られますが、地味で暗い感じがします。 蛇足ですが、山平さんは、このアルバムの発禁、回収を72年6月の東京での初ワンマンショーの最中に聞かされたそうです。なお、山平さんはその後、東海ラジオの深夜番組のパーソナリティーで人気爆発し、73年12月に名古屋でリサイタルを開催されます。今回その時のライブも復刻されています。 放送禁止歌(紙ジャケット仕様) 関連情報
オウム真理教の取材・ドキュメント映画制作で知られる森達也さんの「東京・ヘンな場所・あまり行かない場所ルポ」。軽妙な筆致であっという間に読めます。小菅拘置所・歌舞伎町ストリップ・浅草「無縁仏」安置所・上北沢の精神病棟・山谷・屠場・・・確かに行きません。多く引用されている「あしたのジョー」の例えも然りなのですが、場所場所のルポのユーモラスな筆致の端々に「虚無的」と言いますか、「死」を匂わせるものを感じました。勿論、大袈裟・大上段な構えはないのですが、単なる奇譚探しツアーでなく「生きる」とは?人生とは?という視点で、忌避される場所・敬遠される場所は何故「忌避」「敬遠」されてきたのかを著者は自問し、かつ読者にも問うているような。なかなか面白い。 東京番外地 (新潮文庫) 関連情報
初めから卑劣で馬鹿にした内容の歌ならともかく、差別用語と同じ言葉で意味の違う言葉が入っているだけで放送禁止にされたり、差別などの悲しい事実を歌った物が当事者達を傷つけるからといった理由で放送禁止になっていたり。実際は放送禁止歌を取り締まったりする物は何もなく、むしろこういった歌によって差別など世に訴えることが出来ることもあるのだと改めて感じました。学生時代友人から60~70年代のフォークをおさめたカセットをもらった。遠藤賢二「カレーライス」、加川良「教訓Ⅰ」と言った歌に混じって、初めて聞いて衝撃を受けた岡林信康「手紙」。悲しく切ないあの歌は、今もなをフルコーラス口ずさめる程だ。傷つける、抗議があったなどと、いつしか勝手な噂や憶測で、数々の名曲が自主規制されてしまう。歌をきっかけに考えさせられることは多く、自分もそうだったように若い世代に聞いて色々と考えてもらいたい歌が多数載っている。森氏の作成したドキュメンタリー番組を見ていないので、是非再放送して欲しい。 放送禁止歌 関連情報