橋本氏は本書の中で「難しい内容の話を簡単な言葉だけで説明することは困難である」というようなことを書いているが、彼はこの離れ業を見事にやってのけてしまっている。多少なりとも活字に親しんでいる人であれば、本書を読みとおすのにさほど時間はかかるまい。それぐらい、橋本氏の文章は読みやすい。これは、書いていることへの理解の深さと表現能力の高さが余程卓越したものでなければとてもできない芸当だ。
本書では日本語の変遷というテーマを主軸に幾つかの古典作品を紹介するような形式をとっているが、特に私が新鮮に感じたのは「徒然草」の前半が孤独な青年時代を過ごした兼好の筆によるという説と、「金塊和歌集」の作者・源実朝が「万葉ぶり」の男性的歌人というよりは現代的「オタク青年」であったという説だ。とりわけ実朝の歌は以前から好きであり、橋本氏の指摘を受けてよりしっくりと理解出来た部分が多い。
ただ、橋本氏が言うように、古典に親しむためには結局「慣れる」ことが肝要なのであって、本書を読んだからといって古語をすらすら読めるようになるわけではない。しかし、一度「面白いものだ」ということさえわかれば、１０００年前に書かれていようと所詮は日本語、読めないことはないのである。橋本氏が伝えたいのはそこなのだろう。

いよいよFInal Stageはテレビアニメ版の最終回ですね！最後のハチロク対決が楽しみです！！

夏の劇場版は原作の第１話からまた新たなスタッフと最新の映像で甦るみたいです。
特報見るとかなりリアルなバトルと人物描写が描かれているみたいでそっちもとても気になってます！！

まさかの最終回ではありません。現在劇場版も製作中ですので、ご安心下さいませ。

本書には6つの短編小説が収められている。
3編は20代の若者が主人公で（「助けて」、「枝豆」、「海と陸」）、2編はその両親、つまり子育てを終えて高齢者になりつつある世代が主人公になっている（「渦巻」、「父」）。残りの1編（「団欒」）は二世代をあわせた家族を描く書き下ろしだ。
いずれも東日本大震災以後に書かれたもので、震災後の不安定な世界が背景になっている。

若者と中高年の違いは性欲の多寡である。若者には性欲があって、地震に恐怖を感じつつも、あるいはボランティアについて語りつつも目の前の異性を求める気持ちは常にある。
それは橋本治がこれまでの短編集で何度も描いてきたとおりである（『つばめの来る日』の「水仙」など）
一方、中高年に性欲がないわけではないが、それよりも老いを迎える自分の人生に落とし前をつけることのほうが大きな課題になっている。
中高年とはただ若者の親であるだけではない。現代の長寿社会では、60代になっても90代の親が生きていて介護を必要としていたりもする。
昔であれば爺さん婆さんと言われるような年齢になってなお、親の役割も子の役割も残っている。それが現代の中高年だ。

どれだけ「肩の荷」を下し続ければいいのか。そのたびにすることがなくなって行く。（「渦巻」より）

そう思って淳一郎は気がついた。「自分はもう父親を必要としていないのだ」と。（「父」より）

14年前の第二短編集『つばめの来る日』の「甘酒」では、ヌードグラビアを買う老人を描いた著者だったが、震災と病気と自身の高齢化を経て、老いの描き方がまた変わってきた。
橋本治は何歳になっても常に新しい世界を見せてくれる。

ちなみに今回は短編集の定番になっていた同性愛者の恋愛話はない。
その意味でも新境地といえるだろう。