購入した頃、一度見ていたが、久しぶりに見直してのレビュー。やっぱり良いドラマだと思う。
DVD-BOX1は、オッス、チュー、カーコ三人が出会い、同居生活を始め、時にぶつかったり喧嘩をしながらも徐々に理解し、愛情・友情を持つ過程が描かれる。オッスの母親の死とジーンズ・ショップの開店が物語上での一つの区切りとなり前半部分が終了する。
爽やかな青春ものではあるが、主人公格の三人、そしてヌケ作、ツナギも含めて失敗と挫折の連続であり、結構ほろ苦いドラマだ。「夢」を追う若者と厳しい「現実」の間での葛藤がドラマの核であり最大の共感するポイントではないかと思う。
そして今回見直して強く感じたことは、家族の絆の物語。オッスと父・母・妹の物語はBOX1のストーリーの核でもあるが、チューと姉、カーコと父、ヌケ作と父、大家の父子、様々な家族の関わり方、葛藤、愛情が描かれる。ストーリー云々以上に、このドラマに描かれている人のあり方、人への接し方そのものが感動的なのだと思う。
このストーリーと描かれ方は今見ても色褪せることなく、今の時代にも共通のテーマだと思う。むしろ、このドラマに描かれている人としての在り方は、今見直すべきではないだろうか。
さらに特筆すべきは1970年代後半の鎌倉の風景が描かれていること。寺社や自然が美しく織り込まれるが、街の風景は今とはかなり異なる。小町通りも観光化されていないし、鎌倉駅も建て替えられる前の駅舎であり、全体としてどこか庶民的で懐かしい。
今、俳優の演技を振り返ると、勝野洋や長谷直美はフレッシュで勢いがあって、役柄にマッチしている。特典ディスクで勝野洋は「自分の演技が下手なので当時は試写を観るのが嫌だった」と言っているが、決して下手ではない。あのときにしかできない、若さを前面に出した演技は素晴らしいと思う。それと同時に子役からのキャリアがある小倉一郎や、俳優として既にある程度実績のあった秋野太作(旧名 津坂まさあき)は上手い、また
原田美枝子(
みゆき)はこの頃から光るものがあった。
そして、ベテランの北村和夫、加藤治子、日色ともゑ等はさすがに素晴らしい演技力。若手のパワーとベテランの演技力、双方がうまく引き立てあい、サポートしあっていると思う。
特典ディスクでは、勝野洋、小倉一郎が極楽寺近辺を訪れ、対談する。当時のロケ地のこと、出演者のこと、監督のことなど、ファンには嬉しい企画だと思う。この中で小倉一郎が言うには、一般のファン、当時リアルタイムで観ていた人たちから、このドラマを自分の子供たちに見せたいといわれることがある、ということ。
時代をこえた普遍的なテーマを持ったドラマなのだと思う。
エレファントカシマシにはいつも励まされてばっか。宮本さんはホントおせっかいなんだよね〜。ありがとうございます。さぁ がんばろうぜ!! 宮本さん、、これからも一緒にがんばろうぜ!!
「俺たちの朝」DVD-BOX2、後半の24話と特典ディスクが収められている。
ストーリーは、三人のジーンズ・ショップが約12話(約3か月分)。見直す前はもっと長くやっていた印象があった。それだけインパクトが強いパートだったのだと思う。このパートは三人にとって苦難の連続で最終的には失敗するが、三人はこの試練を受け止め整理する。前半で培われた絆がさらに強くなり、喧嘩をしながらも三人の絆で乗り切っていく。恐らく一人であれば潰れてしまうような試練でも、三人であればこその展開だった。
次いで金沢→逗子→鹿児島→稲村ケ崎→極楽寺と戻りオッスの船出でラストとなる。このパートは別れと旅立ちのパートでもあると思う。美雪ちゃん(
原田美枝子)との別れ、オッスの父(北村和夫)と兄妹との別れ、美沙子(上村香子)との別れ。いずれも悲しくも心に刻まれる名場面だ。
原田美枝子の空気感はあの若さで異質ともいえるオーラがあるし、北村和夫の別れの場面の表情の微妙な変化はベテランという言葉だけでは表現できない凄い演技。
今改めて観ると、美沙子は三人、ヌケ、ツナギに次ぐ第六のメンバーとでもいうべき重要な役だった。オッスに恋心を抱きつつ、三人を温かく見守る。上村香子も役の雰囲気にピッタリだったと思う。
最終回に至るまでの数話を観ると、実はチュー(小倉一郎)がストーリー上で果たす役割は一見した以上に大きかったと思う。気弱で最も等身大の人物、夢と挫折の間で悩み苦しむ姿は多くの人が身につまされたのではないだろうか。
古都鎌倉を舞台としどこか懐かしく、自然も豊かなロケ地。この鎌倉の中でも、とりわけ古い鎌倉の雰囲気が残り、地域としても小ぢんまりしている極楽寺〜稲村ケ崎の近辺を主な舞台としたことも、このドラマの登場人物やストーリーの良さをさらに際立たせる効果があった。
客演の中村玉緒(美雪の母)や野村昭子(稲村ケ崎のアパートの大家)の演技も大きな役割を果たしていた。
特典ディスクではプロデューサーの岡田晋吉氏と助監督を務めた新城卓氏が制作の背景について話し、途中で勝野洋と小倉一郎が会話に加わる。このドラマの企画・制作に関わったお二人のコメントはドラマの背景を知る上でも貴重。四人でドラマのテーマについて語られるが、最終的には人と人との思いやり、優しさ。単純ではあるが、普遍的で今の時代に失われつつあるが、人として伝えていかなければならないものがこのドラマには生き生きと描かれているのだと思う。
尚、第45話でヌケ作(秋野太作)が夜の海辺で一人酒を飲みながら「ゴンドラの唄」を口ずさむシーンがある。黒澤明監督の「生きる」にかすかに影響を受けたシーンだと感じた。