本編画像を最初に観たときは、ブルーレイかと思ってしまったくらい、SDにしては素晴らしい画質だ。
他の作品にもこれは見習ってほしいものである。
守屋監督は「スクールデイズ」が面白かったので期待していたが、なぜか5年もブランクが空いての2作目になる。
内容は完全なる「グランドホテル形式」だが、最後のまとめ方は上手かった。
全体的にテンポがいいため、引き込まれるシーンも多くある。それを演じる俳優陣もまた良い。
主演は特にいないのだが、強いて挙げれば生田と
山田孝之、玉山あたりになるだろうか。山田=玉山は「手紙」以来の共演だが、
息の合った芝居で魅せてくれた。
ヒロインは
麻生久美子、小島聖、山崎真美の3人で、舞台がモーテルなので当然「際どい」シーンもあるのだが、
それぞれがコケティッシュに演じていて好感だった。
山崎真美は、もとから映画女優が目標だったそうで、順調にキャリアアップしているのではないか。
作品としては4つ星だが、さらに面白いのが特典ディスクだ。
登壇者が各自暴走気味の舞台挨拶はもちろん、番宣用に作られた60分の「酒飲みながら」対談が爆笑ものだ。
単なる居酒屋での仲間内飲み会、のような雰囲気で語られる、映画の裏舞台の話は本当に面白かった。
まあストーリーにほとんど関係ないのが難点だが(笑)、鑑賞後にはぜひ観てほしい。
特典だけ見ると5つ星だが、総合点としての星は4つです。
源氏物語が好きで、谷崎潤一郎訳をはじめとして、瀬戸内寂聴、円地文子、それから漫画の牧美也子作や大和和紀作「あさきゆめみし」などを読んできました。が、映画では、前回の「千年の恋 ひかる
源氏物語」は他のみなさんもおっしゃっているように、あれだけの俳優さんを揃えていたのに残念ながら非常につまらない作品でがっかり。また、主役の
生田斗真に関しては、たまたま最初に見た作品が、つい先日上映されたばかりの
宮藤官九郎脚本「土竜の唄」で、金髪ヒョウ柄服のハデハデチンピラな役柄(笑)。いったいこういう人が光源氏をどう演じるのか??と興味深々でした(^^;。
榎木孝明、東儀秀樹、
東山紀之など男優さんたちは役柄にぴったり。肝心の
生田斗真は、大きな目に彫りの深い顔立ちで鷲鼻気味、どちらかといえば欧米人に近い美男なので最初はあわないと思っていたけれど、それなりに陰影の深い表情もこなしていて、意外によかったです。特に青海波やラストなど雅楽の場面では、原作の「神も空から魅入るような」と言われるほどの美しさが見事に表現できていて、大変よかったです。
ただ、個人的には女優さんがあまりあっていなかったような・・・。教養高く重々しい気品と美しさのある六条御息所に
猫顔でキュートな
田中麗奈?どちらかというとボーイッシュなイメージの
真木よう子が、しっとりとして大人びた落ち着きのある藤壺?きりりとりりしい芦名星がはかなくなよなよと受身な夕顔?なんだかどれもちょっと違うんじゃないかなあ・・と。それに対してヒロインともいうべき紫式部を演じた
中谷美紀はさすがの貫禄。また、
多部未華子の葵上はまだ精神的に幼いお嬢様の感じが出ていてよかったと思いました。
安部晴明の登場は非常に違和感があり必要なかったと思います。ただ映画を親しみやすくするためだけに登場させたのでしょうか?それならいっそ野村萬斎にたのんだ方がよかったのでは(笑)。
窪塚洋介は好きな俳優さんですが、今風の言い回ししかできず、セリフがはっきりしなくて軽々しく、場面にそぐわない感じがしました。
鑑賞前に、原作や翻訳でなくとも、せめては牧美也子や大和和紀の漫画を読んでおくのがおすすめです。でないと、映画の展開では、六条御息所の屋敷から朝帰りしたその帰り道に夕顔と関係を持ち、そのすぐ後に葵上との間に子供が生まれたみたいな、源氏がものすごく女性関係に見境ない男に見えてしまいます(まあ実際、そうなのですが・・・(^^;)。
映画では、源氏の作者、紫式部が藤原道長を愛しているという設定ですが、もし本当に紫式部が道長と恋仲で、道長に対する自分の思いや恨みつらみ、煩悩をこめて
源氏物語を書いたのだとしたら、また作品の見方が変わってきます。それも興味深いことだと思いました。
また、衣装は美しく素晴らしいです。ほの暗い室内の雰囲気とその調度もよかったです。ただ、屋外から見た建物や庭園の作りやCGが安っぽくて残念でした。源氏の人生の最初の3分の1くらいしか描いていませんが、それなりに原作に忠実で、重要なシーンはおさえてありました。原作は仏教思想に強い影響を受けた当時の人々の人生観や無常観がよく出ていて、右大臣、左大臣家の天皇を取り込もうとする政争やそれに巻き込まれて失脚、そしてまた復活する光源氏を描く政治劇でもあるのですが、そこまで2時間の映画で描けというのは酷というものでしょう。華やかで雅な源氏映画という意味で、よい作品になったと思います。