てんかんで倒れる阿部薫のシーンがたびたび出るが、演奏中に遭遇したという豊住氏に言わせればあんなもんじゃなかった「ケイレンがひどくいつも死ぬんじゃないかと思った」という。共演の多いミュージシャンより鈴木いずみとの関わりに重点が置かれていた内容には少し不満が残った。夫婦げんかのシーンではボクサー志望だった阿部の前でどれだけの抵抗がいずみにできたのか疑問だし、包丁で足の小指を切るシーンは薫がかみ切ったと聞いたがほんとうはどうだったのか。映画のサックスの吹き替えは柳川氏が担当したというが、阿部薫の残された音源のほうがよかったのではないかと思った。それにしても灰野敬二、フェダイン、
ジャズ評論家の副島氏の顔が出てくると、面識のある私は思わず微笑んでしまった。見終わった後、ライブハウスの騒のママ、いずみの自殺を目撃する薫の子供が今どうしているのか、興味がわいてきた。亡くなってから30年以上たつのに過去の音源が再発され続ける阿部薫の音楽以上に、これを認め録音し残そうと奔走した故小野好恵の存在を忘れてはならない。
たとえば、この小説のあらすじがまったく違ったものだったら、野間文芸新人賞を受賞できなかっただろうか?菊池も吉田のおばはんもチャアミイも桜井も上田もでてこなかったなら駄作に終わっただろうか?
あらすじは突拍子もなく、キャラクターは濃厚の極みだが、町田康の小説の最大の魅力はもう少し根本的だ。解説にもあるように太宰治を思わせる退廃的な生き方だが、その生命力の強さは常人の比ではない。あらゆるものに反発を抱きながら、それを受け入れ、酔っ払い、また明日が来る。なぜこの小説を読んで、生きる力が湧くのか?これぞジャパニーズパンク。
途中まで小説を読んでから見たが小説を読んでない部分は良くわからなかった。しかしわかるとかわからないとかいう問題でなくこの疾走感とわけのわからなさが良かった。佐伯ひなこは適役すぎるほどぴったり。 原作にでてくる特異な外観の店を忠実に再現して欲しかったが。テンション低いときに見るもんじゃないかな