有名な書き出しの格調高い文語調だが暗喩や比喩はなく直接的な表現でわかりやすい。現代人にとっては物語的にもう少しヒネリもほしいところだが、この素直さが文章の格調と相まって良いのだと思う。
この映像で観る高瀬舟は、小説の第3者視点(同心)の淡々とした感じではなく、弟を手にかけてしまった喜助視点なので余計に悲しく切ないです。成宮さんの演技は流石!と思いましたが、特にラストの表情が印象的です。買って良かったです。
これは今で言う「安楽死」の問題である。手伝った者は自殺幇助かあるいは最悪の場合この高瀬舟のと同じに殺人の罪に問われかねない。現在でも微妙な問題をあの時代に既に森鴎外が問いかけていた。逆に見るとこの問題はそれほど古くから存在するのかもしれない。医者である鴎外だからこそ問題提起できたのだろう。今のところまだまだ永遠の課題のように思える。
幾つかの短編からなる。
私のお気に入りは「妄想」と表題の「山椒大夫」「高瀬舟」。「二人の友」もいいんだよなー。
「妄想」は、自身を回顧した作品。「宴会嫌いで世に謂う道楽とうものがな」い自分。そして、数千巻持っていた雑誌を学校に寄付する。「多くの師には逢ったが、一人の主には逢わなかったのである。」
かっこいいー。
「山椒大夫」は、父親を追って、旅に出た母子たちが、人買いによってさらわれてしまう。弟厨子王を助けるために姉安寿がとった行動。(個人的には
鈴木杏樹を想像してしまった(笑))そして、結末は・・・ 感動名作です。
「高瀬舟」は、罪人を護送する舟。この舟に乗っている弟殺しの罪人喜助の顔がなぜか晴れやかで楽しそう。疑問に思った同心羽田庄兵衛が問い詰めると・・・
安楽死についての作品であるが、しみじみと淡々と書かれているのが印象的。
表題の2作品だけでも、読む価値が十分にある。