映画館で見ましたが、一定の年代より上の人には、たまらない作品だと思います。
宮崎駿監督が最後にやりたかった事を、すべてやりきったと受け取りました。
何がすごいかって、背景の描写が全て真実であり、それが当たり前の事実として
描写されているので、何の説明も無く、淡々と進む所です。
この映画を見る人は、この程度の事は知ってるよね? と、宮崎監督から挑戦を
受けている感じです。それが昨今の映画には無い感覚で、非常に新鮮でした。
3枚翼の奇抜な飛行機は実在した飛行機ですし、
ベランダ並べたベッドで毛布に
くるまって寝るのも実在した結核治療法です。
主人公が、『いっせんじょうきで~』などと、さらっと話しても、知らない人に
は、何の事だか理解できないでしょう。 (一銭蒸気ですね。)
そんな内容が随所に出てくるので、個人的には非常に気に入りましたが、勤め先
で、見たと言う若い人に聞いたら、『何だかサッ
パリ解らない』と言っていまし
た。 当然の反応ですね。 でも、それがこの作品の良い所だと思います。
私が宮崎監督の手法に最も関心したのは、物語が終わり、一瞬静かになった後、
『ひこうき雲』がかかる時に、2秒ほどレコードノイズが入るところです。
デジテル的に簡単に消せるノイズを敢えて残した所が実にマニアックだと、最後
に一人でニヤついてしまいました。 これは、一人でじっくり鑑賞する映画です。
完成した映画film写真の提示や、その場面がどのように作られたか等の、
技術的な解説も一部あるが、
本書では、田辺修氏を中心とした原画が30ページほどで、
残り140ページほどは鉛筆と水彩で描かれた男鹿和雄氏のストーリーボードと背景画が占めていて、
簡単に言ってしまえば、男鹿氏のかぐや姫の物語にかかわる水彩画集になっている。
本書では、ストーリーボードと背景画がそれぞれ70枚、110枚ほどづつ
A4版のページに2枚づつのサイズで美しく提示されており、
その配置の仕方、サイズともに、楽しんで鑑賞できる。
かぐや姫の物語で描かれる、里山の風景、月夜の景色は、本当に風格があり、みずみずしく、
そして懐かしさにあふれていて、いつまでも見続けたい気持ちにさせられる。
本書で、美しく印刷された背景画を見ると、
映画館では、残念ながら再現できなかった作品の本来の色を想像することができる。
例えば一見、同じ、白抜けの背景画でも、実は、薄い色がついていたりして、
微妙な違いがあるのがわかり、本当に息をのむようにみずみずしいリアルな
タッチで
絵が描かれていることがわかる。
画集を見て、本作品のように、鉛筆と水彩で描かれた淡い色彩で
絵が描かれている場合、想像以上に大きなものが、
映画館で
スクリーンに投影される過程で失われていることがわかった。
絵というのは、本当に不思議で、蛍光灯の下で見たり、太陽の光で見たりすると、
これが同じ絵なのかというように、色相を変化させる。
だから、画集を見るのは、コンピューターや映画館で絵を見るのと違い、光の影響による色相の変化を楽しめるというメリットがある。
少し、窓際に近いところで見たり、夜、読書灯のもとで眺めたりして、私は楽しんでいる。
映画関係の画集で、私が大切にしてきたものに、
展示会場で手に入れた黒澤明の絵コンテ集や、
フィルムからの言葉―山本二三画集があり、
これらは、何十回も見続けてきたが、
本書もそのような画集の仲間に加わりそうである。
静かで、幸せで、懐かしい気持ちにさせてくれる素敵な画集です。
一度、手に取って眺めて見てください。
きっと、あなたも本書を手元に置いておきたい気持ちになると思います。
I see this movie more time, and now with this book it's possible to have a memory of it.