この映画を語る上でまず初めに言われるであろう事柄が映像美、そしてIMAXや3D上映での迫力
ある臨場感、DaftPunkが手がけたサントラなどが挙げられるでしょうか。賛否両論色々あるよ
うですがこれらについては既に多くを語られているので、私は違った視点からレビューを書き
たいと思います。
私は28年前の初代『TRON』の封切の日に都内の映画館に行って鑑賞しました。まだほんの子供
でしたが当時からCGが映像の世界にもらたすであろう可能性を深く確信しており、いたく興奮
した思い出があります。それが28年後まさかの続編登場で本当にビックリさせられました。上
映前のスペシャル・ビューイングも行きましたし、当然封切日に観にいきました。
この映画で私が最も評価したいのはケヴィン・フリン役に初代の主人公ジェフ・ブリッジスを
起用したことです。とくに30代の顔をCG合成した効果は絶大で、初めに見たときは「ジェフ・
ブリッジスまだまだずいぶん若いなあ」と素直に感心したものです。しかし実際は初代『TRON』
では若き日のAppleのスティーブ・ジョブズやFacebookのザッカーバーグを思わせるようなやん
ちゃ坊主みたいなケヴィン・フリンが28年を経て、東洋思想に傾倒しつつ眉間に深いしわを寄
せて、何かを悟っているような初老の男性になっている姿が印象的でした。自分の作り上げたG
RIDがクルーというプログラムに実権を掌握されてしまい、隠遁生活を営むようにOutlandとい
う僻地でその様子を見守りながら暮らしています。そこにクルーの奸計によりGRIDに転送され
たサム・フリンが登場することにより話が大きく展開します。
初めに登場するクルーはコロッセウムの死闘を冷ややかに鑑賞する
ローマ皇帝にように、カウ
チに横たわりいかにも悪役然としています。そして映画のところどころで自分の計画を阻止し
ようとするサムやケヴィンを抹殺すべく死闘を繰り返し、あくまでも悪役に徹しています。彼
の目的は、GRIDを“完璧な世界”に変えた後、ポータルという現実世界への出口から人間世界
に進出し、人間(ユーザー)の世界を支配するために軍隊を組織して攻勢をかけようとするこ
とです。
ですが、そもそのもこのクルーというプログラムは、GRIDの最初期の段階でケヴィンが理想と
する“完璧な世界”を作ることを目的にケヴィン自身によりケヴィンの姿に似せてつくられた
プログラムだったのでした。初めはケヴィンやトロンと協力し“完璧な世界”構築に向けてと
もに手をとりあい協力していたのですが、ある時ケヴィンに重大な衝撃を与える、ある種パラ
ダイム・シフトとも言うべき事件が起こります。そのことによりケヴィンはほぼ180度考え方を
変えて、GRIDの設計に大きく変更を加えようとします。しかしそれはクルーに与えられた“完
璧な世界”を作るという目的とは大きく乖離したものだったため、クルーの目には耐え難い裏
切りに映ったのです。そしてGRID内で革命を起こし“ユーザー”を敵として駆逐すべく行動を
起こします。
この部分を考えるとき、私はどうしても『2001年宇宙の旅』で惨劇を引き起こしたHAL9000に思
いを馳せずにはおられません。HAL9000は
木星探査を行うため出発した宇宙船ディスカバリー号
の全ての制御システムを司るために搭載された人工知能でした。しかし、宇宙船の制御という
ミッションと同時に「乗務員に知られずモノリスを探査せよ」という極秘命令もインプットさ
れていたため、最終的にはディスカバリー号の乗組員全員を抹殺し、HAL9000単独で任務を遂行
しようとする「狂ったコンピュータ」となってしまったのです。
『TRON : LEGACY』にせよ『2001年宇宙の旅』にせよ、浮き彫りになってくるのはコンピュータ
故の純粋さと、人のもつ矛盾や心変わり――いい言い方をすれば柔軟性――です。信じていた
ものに裏切られてしまった苦悩。矛盾するミッションを同時に与えられたために、自分なりに
最善を尽くした結果至ってしまった狂気。純粋であるが故に狂ってしまう悲しみがここには横
溢しています。そんな彼らを「悪」として切り取っていいのでしょうか?
人間とは矛盾だらけで、しばしば混乱を引き起こします。人と人との間であれば柔軟性や想像
力でそれを埋めることもできるでしょう。ですが、無垢な魂はそれを理解できません。
ケヴィンが最後にとった行動は、そういった全てを理解し、クルーをも受容することで責任を
取ろうとする男の覚悟の帰結だと思います。そう考えるとケヴィンが終始痛みにも似た表情を
浮かべているのも納得がいくところです。
もし機会があれば、そういった点にも注目し鑑賞していただければ「薄い」と言われるストー
リーにも奥行きが出ることでしょう。
【追伸】今回は『TRON』でいい味を出していた“Bit”が出ない、とお嘆きの声が多数聞かれま
した。でもYesとかNoとかは言わず動きもしませんが、“Bit”は今回もちゃんと出てますよ
(笑)。まずは幼少時のサム・フリンの部屋、GRID内部のケヴィンの部屋の暖炉の上(ケヴィ
ンがガン! と置く、後でクルーが触る)。そしてもう一箇所。さて、どこでしょう? ヒン
トは「空」です。是非DVDでチェックしてみてくださいね。
エスティマ50の右側スライドドアが壊れディーラー見積りが5万弱と高いので、こちらを購入しました。
修理完了までの時間は1時間弱でいけました。
わかりやすい説明書とレンチ付きで助かりました。
接着剤付きネジが一本はずれなくて時間がかかりましたが、それがなければ30分でいけますね。
安く直せて、ラッキーでした。