ではなく、「恋愛に歳は関係ありません!}と、つきこさん。「・・その反対だったら?」と、先生69才。携帯電話を持たされてしまう先生。なかなか目的が達せられないふたり。随所にあったかい笑いがちりばめられ、観て得する感じな舞台です。細かいお楽しみはご覧になって下さい。最後まで久世音楽座?の出演者ご一同に満足まんぞくでした。
この小説には、熊やら河童やら人魚が当たり前のように登場する。そして主人公は、そのことにたいして驚いたりしない。そこにいちいちツッコミを入れたくなるような人には向かない小説。 川上弘美さんの作品を読むのは初めてだったが、本当にいい小説だと思った。 まず、主人公が素直な普通の人であるところに好感が持てる。最近の小説の主人公は、やたら斜にかまえたひねくれ人間が多くてうんざりしていたので、この小説を読んで心が洗われた。 「神様」でほのぼのして、「夏休み」でしんみりして、「花野」で切なくなって、「河童玉」で笑って、「クリスマス」でも笑って、「星の光は昔の光」でいろいろ考えさせられて、「春立つ」で不思議な気分になって、「離さない」でゾッとして、「草上の昼食」で号泣した。 いろいろ楽しめて、とってもお得だ。
主人公の井之頭五郎(30代後半くらいか)が、仕事で立ち寄った街の食事処でとる食事の一こまを綴った、一話が8頁の連作短篇マンガ集。
全18話の文庫で出ていた一冊に、10年ぶりの新作「東京都内某病院のカレイの煮つけ」(8頁)と、谷口ジロー、川上弘美、久住昌之の三人の鼎談(10頁)を加えた新装版です。
その街、その場所のたたずまいと、腹の減った主人公が食べる食べ物とがいい感じで合わさって、心地よく、どこか懐かしい空気感を醸し出しているところ。「うん! これはうまい」「うん! これこれ!」と思いながら食べている主人公の、幸せな満足感に浸っている表情。そういうところが、とてもいい。『孤独のグルメ』ってタイトルも、この作品にふさわしいネーミング。
作画者、本作品のファンである小説家、原作者の三人の対談では、絵を描かれた谷口ジローのコメントが興味深かったですね。
<うまく描けそうだなって思ったのは、豆かんのときね。あの回のときに、豆かんを食べたときの表情というのかな、「うん、うまい!」っていう顔が描けたから。なんか描けそうな感じがしたんですよ、そのあとから>なんて語っているところとか、「なるほどなあ、そっかあ」と、頷かされました。
収録作品の中のマイ・ベストは、「第11話 東京都練馬区石神井公園のカレー丼とおでん」。不思議な懐かしい空気感を、特に強く感じた逸品。ラストの主人公の満ち足りた寝顔も、いいんだなあ。
専ら徳兵衛が追い込まれる経緯が描かれるこの作品を、徹頭徹尾お初の側から描いた物語。有名な封印切りの場面すら全く描かれない。恋とはどういうものか、そのすさまじさを際立たせるために、徳兵衛が有罪であったことまでにおわせるコペルニクス的転回に驚かされるが,同時に作者の筆力に圧倒させられる。
神様という短編だけ入った本。
前半に以前収録されたままの神様、
後半にあのことがあった後の神様2011。
「神様」、大好きな物語だった。くまと散歩に出るという突飛な設定
なのに平和でほのぼのとしてて、温かく
でも生きていくことの大変さや悲しみもあって。
この作品から急激に川上弘美さんが好きになり、以前に
出ていた作品、以後の作品すべて買いそろえている。
絶対にはずれのない作家としてすごく信頼している。
神様2011を読んで、一見平和な日常が切り取られているのに
防護服や、ガイガーカウンター、今日の線量など、リアルな
言葉が少しだけちりばめられていて、悲しかった。
悲しいけど、あのことをなしにすることは出来なくて、
あのことと折り合いながら生きていかなくてはいけない。
日常はずっと続くと思っている人間の甘さを
震災はすべて打ち砕いて流していってしまった。
それがすごくリアルに書かれている。
才能のある人はその人なりの、ない人だってその人なりの
震災のとらえ方、自分が今出来ることを行うという姿勢は
変わらないのだけれど、川上弘美さんは才能のある人として
あのことを絶対に人々に忘れさせない手段を選んで実行したのだと思う。
平和な日常があのことという震災によって
180度変わってしまった。ほとんどの人が放射性物質や放射能の
ことについて専門用語まで知ってしまった。後戻りはできないし
なかったことにもできない。あのことを忘れないで日常を
続けていくしかないのである。
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