1995年作品。今まで何十回この作品を愛聴してきただろう。
自分が矢野顕子に出会ったきっかけであり、生涯手放せないだろう一枚。
本作は、彼女が90年代初頭から定期的に発表している「ピアノ弾き語りカヴァー」シリーズの2作目。
彼女のカヴァー能力の高さには定評があり、原曲が分からなくなる程彼女流に再構築しなおすその
才能は「他人の曲、矢野が歌えば矢野の曲」という彼女自身の名言に言い尽くされている。また録音
環境・選ばれるピアノの音色・収録曲の性格等が相まって、作品毎に微妙にトーンが異なるのが本シ
リーズの面白い処。よって人により愛聴作品が異なるのは当然だが、個人的には本作を選びたい。
本作中には、「別れ」「死」といった重めのテーマを湛えた曲が要所に配置されており、全体に内省的
で物寂しさが漂う静かな作風。人によっては暗すぎると感じるかもしれないが、気分が沈んだ時、この
作品を聴いて静かに心を見つめ直すことで前向きになれる、不思議オーラに満ち溢れている。
演奏は決して仰々しくなることなく、言葉の微妙なニュアンスを壊さないように、絶妙な音数でポツポツ
とピアノが紡がれていく。過去に「ピアノが愛した女」というドキュメントも制作された彼女だが、ここまで
歌と伴奏が一体となった人を知らない。彼女にとってはピアノの音が声そのものなのだろう。ジャズや
クラシックの知識を基礎とした、高度な和声の扱い方も見事だ。
文部省唱歌「椰子の実」では、アップテンポで軽快にピアノが飛び回る斬新な解釈に驚かされる。小坂
忠の名曲「機関車」では、主人公の痛烈なまでの愛情の言葉を表現は抑えめながら一言毎に深い感情
をこめ呟くような彼女の名唱に胸が締め付けられる。ジェームス・テイラーの隠れ名曲「ダディーズ・ベ
イビー」では、彼女独特の癒されるソプラノが親から子への包みこむような愛情を母性一杯に表現する。
終盤のクライマックス「いつのまにか晴れ」でさえ必要以上に感傷的になることはなく、言葉を淡々と配
置していく彼女の歌唱が却って聴き手の心を熱くさせる。作品は熱くなった聴き手の心を冷ますような、
彼女自作の洒脱なワルツ「ニュー・ソング」でしっとりと幕を閉じる。
無理やり感動させようとする大袈裟で安っぽい仕掛けは全く見あたらないのに、こんなにも一つ一つの
言葉と音に吸い込まれ心が動かされる。彼女の長いキャリアの中でも屈指の名作だ。
(ブックレットに書かれた、彼女自身の収録曲へのコメントがまた味わい深い。聴き手は必見。)
前作「Rainbow Magic」の後篇とも位置付けの出来る内容。
トッド・ラングレンのM.3、ライブでも度々披露してきた、YMOのM.9は前作に収録されて
ても違和感がないであろう。
今作品のハイライトには間違いないが。
今作品で、「Kameleon Pop」という「キーワード」に新しい一歩を踏み出そうとしている
強い意思を感じる。
音作りも、遊び心、試み、変わらないもの… 十分楽しませてくれる。
歌詞も「町のじいちゃんばあちゃん」「東の国の大臣」「アポロ」「スプート
ニク」「聖人君主」など彼らしい?名詞がチョイスされているのが、微笑ましい。
楽曲のクオリティも高く、そのキャリアのなせるワザである。
そう言いながらも、今回一番気に入ったのは彼の声、歌声である。
歳と共に声や歌い方は変わっていくんだろうが、今までの作品の中でも楽曲と
ヴォーカルのマッチングは秀逸だ。
ある番組で「以前は、ボーカルは楽器の一部と考えていた」という発言があったが、
今はそこから「脱却」しつつあるとのこと。
確かに、その歌声は、耳にやわらかく、そして心に残る。
かぁー、これももう10年前のアルバムになるのか。 今も聞いているけど、昔は良く聞いたな。 初期の名曲が集まっていますね。 朝元気になるために聞くのも良いけど、 夜ゆったりしながら聴くのもいいですよ。
ロック好きの僕と、ロック嫌いの嫁と子どもが聴ける数少ないCDのひとつ。Disc 2の 1、恋は桃色/ヤノカミ 2、スポーツマン/高橋幸宏 9.日本の人/サケロックオールスターズ + 寺尾紗穂ばかり聴いています。 好きだから感じるのですが、オリジナルではすべて伝わってこなかった、曲のすばらしさが実感できました。1.2は、両人とも細野さんとの付き合いが深い人なのが興味深い。9は2歳と5歳の息子が大好きな曲。キヨシローの詩がいい。オリジナルでは感じなかったのに。寺尾紗穂が歌う曲の後半は、昭和の情景がすっと入ってきて広がるところが、なんともいえずいい。
日経おとなのOFF2011年9月号は、おとなのミステリ案内として70ページ近くの特集を組んでいます。まず東川篤哉さんの「謎解きはディナーのあとで」を例に挙げ、導入、状況説明、問題解決を踏まえた本格ミステリだと解説し、東川さん、辻さん、有栖川さんの鼎談、僕はこんなミステリを読んできたに入ってきます。そして、三者の推薦するミステリが、緋色の研究、奇岩城、三つの棺を始め18作紹介されていますが、日本人の作品には、異論のある方もおられるかなと思います。次いで、ミステリ作家の系譜、基礎用語、このトリックが凄いが紹介されていますが、物足りない方は、成書が沢山出ていますから、そちらをどうぞ!
次に、東野圭吾さんの2大ヒーローの研究として、加賀恭一郎、湯川学のプロフィール、代表作が紹介されています。そして、古今東西の名探偵30人のプロファイリングと履歴書が紹介されています。
そして、パトリシア・コーンウエルの主人公ケイ・スカーペッタの食卓として作品に登場する料理を、アルポルトのオーナーシェフ片岡さんが再現しています。これが最大の読み物の一つかな?そして、もう一つの読み物、2011年上半期ベスト10です(国内、海外、そして、ランク外のお勧めも掲載されています)。私は、ジェノサイドと犯罪に挑戦してみようかな?
最後にミステリの舞台を巡るとして、ベイカー・ストリート221Bを嚆矢に13ヶ所の内外の観光案内、ミステリが紹介されています。
初心者向けですが、面白い記事満載で、この手の特集としては、よくまとまっていると思います。
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