ハードボイルドなキャラクターが、食べ物を前に小市民的な葛藤をする、
お馴染みのスタイルが好きなら絶対買いです。
一冊まるごと、「夜行」や「かっこいいスキヤキ」の、あんな感じです。
駅弁のエピソードではちょっとセルフパロディが行き過ぎのような気がしましたが・・・
良質な食べ物漫画の例に違わず、読むと腹が減ります。
題名も地口になっていますが、(「花の慶次」とかの「花」と主人公の名前が「花」なのを掛けている)、漫画全体を彩るダジャレの数々が、言葉だけではなく細かく漫画で描写されている点(例えば散らかった部屋の中で探し物をするコマではヘッドランプ付きのヘルメットを被っている)ですとか、久住さんが作り出した食事に関する細かい事を漫画で書き連ねる技法も今では当たり前になってしまっているのですが、この作品は原作と作画が見事な化学反応を起こして、花さんならどんなにズボラでもダジャレを言っても許す状況を絶妙に作り出して居ます。主人公の主婦「花さん(30才)」は福満しげゆきさんの妻に負けない魅力を持っています。
原作者久住さんの長年のパートナー、泉晴紀さんのトレンチコートの男や谷口ジローさんのガチガチのデッサンで描かれた主人公では生まれなかったこの感覚、素晴らしい萌え漫画です。
花さんの名誉の為に申しますと、ズボラとは言えコンビニ弁当や冷凍食品をレンジでチン、と言うレベルよりは遥かにまともに料理をしています。壮絶に散らかった部屋と比較するとどうしても甘い点数になってしまうのですが…(花さんの優先順位は料理>洗濯>掃除)。
作画の水沢悦子さんは別名でその筋では有名な方らしいですが、私は「アオハル」の四コマと本作で初めて知りました。己が不明を恥じるばかりです。
明るい花さんの独り言が多いのは、やはり旦那さんが単身赴任で寂しいからなのか、などと普段は考えない事を思ってしまう実に魅力的な漫画です。お薦めです。
まず、タイトルに惹かれない人は存在するのか?
と言わんばかりのナイスネーミング。
自己の世界に浸りこみ、100%主観的男が主役の
スキヤキを巡るうっとうしさ全開の熱い情熱。
執拗なまでの執着心からは小さい男感が溢れ出ておりますが
なぜか憎めない辺り、これぞ男が本来あるべき姿。
極上のグルメ本?でしょう。
何度読み返しても飽きない人間心理とシュールな設定に脱帽・・・
とても良いです!
笑えます
でも、決して軽く無い
下手なお笑いより面白い
70年代フォークの香りから
ブルース、ジャズ、ソウル、ファンク(?)
久住さんの、拘りを感じました。
YMOネタが入ってたら(あの名曲のカバー?)
☆5個だったのに
残念(笑)
不思議なマンガである。1話8ページ程度の読みきり形式。
主人公である中年男が行く先々で食事をする。筋らしい筋は
ない。グルメ漫画のような、食べ物に対するもっともらしい
説明もない。有名な店にも行かない。また、行列に並ぶよう
なことはしない。街のどこにでもある食堂のありふれた料理
を食べる。豚肉炒めライス、シュウマイ、ハンバーグ・ラン
チ等々。
文字にするとなんともそっけないものだが、何度も読み返
したい気持ちに駆られる。なぜだろうか。
その秘密はタイトルに隠されている気がする。「孤独のグ
ルメ」の響きに寂しげな印象を受けるが、全然そんなことは
ない。むしろ、都会人が享受できる「癒し」なのである。
都会が田舎に比べて長じている点は匿名性と選択の幅である。
自分の存在を消せる町があり、たくさんの食堂がある。
テイクアウトして公園で食べてもいい。自分自身で食事空間
を簡単にコーディネートできる自由を持っているのだ。
お仕着せのない、時間と空間を大切にした食事。それを
夢中で掻きこむところがとても美味そうなのだ。谷口ジロー
の確かな画力がなせる技であるのはいうまでもない。
闇雲に行列に並ぶ人達は本当にグルメなのだろうか。
そもそも、食事とは単に食べるだけの行為ではないように思
う。空間や時間もとても大切な要素である。そして、誰にも
邪魔されない、つかの間の孤独。せわしなく、ほっとかれな
い都会人にとっての貴重なひとときである。
この作品は平成6年から8年にかけてPANJAという雑誌に
連載された。2000年文庫となり、ひっそりと版を重ねている。
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