ケインズとともに20世紀の代表的な経済学者シュンペーター(2人は1883年の同年生まれ)について、評伝と簡明な学説解説が付いており格好の入門書となっている。評伝といっても、著者の一人伊東光晴の名著「ケインズ」(岩波新書青版)と同じく、学説を生み出した時代精神や社会思潮とシュンペーター個人の心情がよく描かれていて興味深い。 ウィーンの裕福な家庭に生まれ、20代に主著2冊を著す早熟の天才は、28歳からオーストリア、ドイツで大学教授を歴任し、49歳からはアメリカに渡りハーバード大学経済学部の黄金時代を築く。この間、第1次世界大戦後の混乱期にオーストリアで大蔵大臣や銀行頭取を務めた数年間を除くと、最期まで現役大学教授としての一生であった。 シュンペーターは副題にあるとおり、よく「孤高の経済学者」と称される。これは、自らの学派を作らなかったこと(弟子たちはケインズ革命に飲み込まれた)もあるが、滅び行くオーストリア貴族の末裔として醒めた眼で世界を観、現実政治とは一線を画したこと、また2つの世界大戦に翻弄されたこと(第1次大戦ではオーストリア大帝国の敗戦・解体に出会い、第2次大戦ではヨーロッパを遠く離れた異国での孤立)によろう。 シュンペーターの学問的業績は多岐にわたる。経済学史の教科書ではワルラスの一般均衡理論を発展させたことと言われているが、評者は、理論面よりも経済社会学、資本主義論、景気循環論での彼の独創力に魅力を感じる。殊に資本主義の本質について、「企業者」の創造的破壊による新結合(イノベーション)が「銀行家」の信用創造と相俟って経済発展の担い手となるとの論は、技術革新の著しい現代において改めて評価されてよい。 昨今の景気対策を巡って、政治に翻弄されるケインズ・反ケインズ論争は喧しいが、今こそ原点に立ち戻り、シュンペーターの資本主義の長期ビジョンに学ぶところは多い。
伊東氏の本を読んだのはこれが初めて。 タイトルのあの日は「3. 11」を意味するのは自明だったのだが、だとすればなぜこの数字をタイトルに用いなかったのか。 はて、と思い購入した。
内容は、伊東氏へのインタビューをライターさんが起こして編集したものとなっているだけに、読みやすい。 文字も大きめ、緩やかな組みである。
前半では、3.11後の被災地での実践、自身の手がけたせんだいメディアテークの再開活動など、現場感溢れる内容となっている。 後半では、自身の建築家としての半生を振り返っている。評者として印象的だったのは、むしろこちらのほうであった。 菊竹研究室と大阪万博への違和感、個にとじこもる姿勢を住宅建築に反映させた70年代、バブル東京とともに寄り添った80年代。 学生運動の心情に共感しながら、自身が建築家として立つことのためらいを正直に吐露する伊東氏は、いさぎよい。
けれど、読んでるとよくわからないなぁというところもある。 社会の保守化や大資本・官におもねる建築活動には、きわめて批判的な伊東氏。 他方で、建築活動における「批評性」を捨てたいとも主張している。社会のあり方を批判してばかりじゃダメなんだよと。 評者には、右にも左にも寄りません、政治的信条など必要ございません、との姿勢を標榜していると読めた。 けれど、氏のこうした立ち位置は微妙かつ曖昧な綱渡りを要するのではないか。と心配になった。
本文にもある通り、若かりし伊東氏は保守性を嫌い、進歩側に寄り添った。 そして70、80年代の建築活動を経て、両者のあいだを行く建築実践、つまりポジティブな意味で建築家の「個性」を後退させ、 社会に開かれた建築をめざすんだとの姿勢にたどり着いたのかなぁと、評者は解釈した。
特に、我が物顔でアーティスト然とする若手建築家や、ロジックばかり先行し社会的事情や利用者のカオが全く見えてない学生のことを、 おじ(い)さん世代として極めて強く批判している。こうした手前勝手な建築家の姿勢が、日本社会に受け入れられていない理由の一端だと一喝。
3.11以後の復興プランでも、自治体などによって建築家がアドバイスを求められたことはほとんどなかったじゃないか、と嘆息する伊東氏。 ご自身のラインをはっきり強く出しているだけに、本書は読み応えがある。 そして、氏にとっての「あの日」は、何も3.11に限ったことではないということがわかる。 建築家が社会から浮き足立つようになってしまい、また大資本や行政に従属ばかりするようになった頃をも指している。 全体を読んで、やっとタイトルの妙がわかった。
だけれど、伊東氏の姿勢には、評者は注文がある。 コミュニタリアンのような立場から、コミュニティ構築をも見渡さねばならないとする氏の立場にはおおいに共感する。 けれど、建築家の「批評性」はぜったい大事だ。というより、それを読みたいのである。 建築家の活動が帯びる「政治性」から逃げてほしくはないし、本書のような率直な語り口を期待している。
不評だ不評だといわれながらもこの「新選組!」完全版DVD! それだけ多くの人が、この一年「新選組!」を楽しんでいたのかという証明になるかと思います。 嫌いな人は嫌いでもいい、けれど私は大好きだった「新選組!」。 祖父母の影響で幼い頃から大河を見つづけてきましたが、 こんなに観ている側を惹きこむ作品はなかったのではないでしょうか? 感動した大河ドラマはいくつもあります。 けれど、こんなにも身近に感じられた作品はありませんでした。 三谷さんの脚本自体がそうなんでしょうが、それを活かしたスタッフ、 キャストの皆さんの「新選組!」に対する思い入れ、 愛情が観ている側の私達に、ものすごく強く伝わってきたからではないでしょうか。 ついに毎週の放映は終わってしまいましたが、これからはずっとこのDVDで「新選組!」を好きな時に好きなだけ楽しめます。 もう一度多摩の時代から見返して、新選組の面々が成長してゆく姿を見るのがとてもとても楽しみです!
探していたものが見つかって大変喜んでおります。大きさがちょうどよかったので助かりました。
著者が話した内容をライターが文章化したものです。こういう著作の場合は話し手の力量をきちんと伝えるライターの力量が大きく問われると思いますけど、たぶん話し手のあっちこっちに飛ぶ内容ごとそのまんま書物になってしまったような気がします。
それはもちろん一面とても魅力なのですが、活字を追う側に立つと意外に厳しいところが出てきますね。いわゆるレファレンスがきちんとなされていないので矛盾とまでは行かなくても読み手に違和感が残ります。できればこのあたりはライターさんが内容の相互チェックをしてくださると良いと思いました。惜しいですね。
この評価は著者の方向性を伝え切れなかったライターさんとそのまま出版してしまった出版社への物です。入門書としてとても斬新な内容が入っているのでこの点が本当に残念でした。内容自体は読む価値が十分にある書物だと思いますので、改版の際にでも問題点を修正されるととても価値の高い書物になると思います。
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