北原白秋、与謝野晶子の肉声を聞く事ができる素晴らしい資料だと思います。作家本人の言葉のイメージを知る上でたいへん参考になりました。またどの作家も味わい深く、たいへん楽しめました。
明治後半に作られた割と新しい長唄三曲のようです。
坪内逍遥の詩の世界が美しい「新曲浦島」。某お家元の御曹司が踊っているのを観て思わず感涙し、調べてみると坪内逍遥作詞ということで余り耳馴染みがないけれども買ってしまいました。「浦の苫屋の秋の夕暮れ」というか、そういう古歌的な美しい想像の海の世界から、船乗りの日常の海へと劇的に変化しながら、歌詞がきっちり曲に乗っているのはさすがです。それに漁師の振りを付けた舞踊家もすごいと思います(曲自体には浦島太郎は出て来ないけれども、舞踊を観ると「浦島太郎かな?」と思える)。
「しずやしず、しずのおだまき」がキャッチフレーズの「賤の苧環」。義経と別れた静御前が頼朝の前で義経恋しの舞を舞うという、語り物のように芝居要素の強い曲です。明治末期の曲というのは知りませんでしたが、歌詞の一貫性や史実の細かい参照などは演劇改良運動なんかの影響かなと思いました。
多摩川は初めて聴きましたが、歌詞に如何にも近代的で堅い部分があり、違和感があります(曲は普通の長唄)。
近代文学黎明期の記念碑的な作品。「そもそも美術(本書中では『芸術全般』を指して『美術』と書かれている)とは」「小説は近代以前の物語文学と如何に異なるか」など、明治中期の文芸思潮がよく分かる作品である。現在に於いては自明である概念が主体なので、新たな発見は無いかも知れないが、近代文学の出発点に於ける叩き台として、歴史的価値の高い書である。長らく絶版状態だったが、重版再開で入手しやすくなった。
いや、冗談抜きに面白いです。
現代の文に慣れきった人には敷居が高いかもしれませんが、歯切れの良い文章にコミカルかつ忠実な描写、明治初年の華やかな文明開化、当時の学生を知りたい人はぜひ一読を。
しかし、昔も今も学生は大して変わりませんなぁ…
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