他の巻にも言えることですが、本作の迫力あるアクションはあくまでリアルに見えるというもので、「本物」である、ということではない。 モチーフは古代拳闘であるものの、描写においては現代の高度なボクシングや総合格闘技の理論を方便としてあてはめているだけです。 当たり前は当たり前なんですが、他(の巻含む)のレビューを見ていると、勘違い?している人もいるので。
古代においてそんな高度な格闘理論が存在したのか、という大疑問はさておいても、やっぱり、鋲付きのグローブで殴りあう原始ボクシングにおいてガードが有効なのか、パンチドランカーになる前に大怪我して再起不能になるんじゃないかとか、いろいろ疑問はあります。
もちろん、大河歴史アクションとしては一級品の面白さであることを前提にしての感想ですが。
前半はエルナンド、ペドロ、グティの脇役三人組のバトル、後半は老雄モンソンと主人公セスタスの一騎打ちが見所。
ここ数巻で絵に描いたような敵役というよりは人間的な魅力に溢れた脇役が増え、がぜん群像劇の感を増してきた。
連載最初の頃もそれなりに面白かったけど、さらにどんどん面白くなってるので通読を勧めます。
セスタス大暴走。 でも、すぐ反省するところがとってもかわいい。 相変わらずすごい説得力の格闘理論。
本巻は拳闘中心で本作の醍醐味であるアクションが堪能できる。 コテコテの熱い(暑苦しい?)ドラマも含め、全体に迷いナシの直球ど真ん中な感じがして悪くない。
全体に漂うシンプルなヒューマニズムや、史実からたびたび飛躍する設定は「そういうもの」として楽しむべきだろう。
元々人物造形の丁寧さや画力で凡百の格闘漫画を遥かに超えていた作品だが、この巻は「圧巻」の一語に尽きる。
ナシカの深みのある人物造形、表情を見ただけで台詞が浮かんでくる丁寧な描き込み、
いつも余裕しゃくしゃくのラドックが真っ青になる珍場面などこの巻の魅力を挙げたらきりがない。
コミックスにまだなっていない本誌掲載分と併せて(ここで人物造形の本当の深さが分かる)、
これはメルヴィルやドストエフスキーの名作群に全く引けを取らない一編だ。
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