他の小津映画でもロケ地だった郊外の原っぱと大きな工場群、そしてその周囲の貧しい庶民街。。東京は田舎から夢を抱いて出てきた庶民がひしめき合って生きる「そんな街」なんだということを淡々と映したドラマ。(そして、いつの時代も田舎から出てきた者にとっては、このセンチメンタリズムが「東京の味」である。三重出身の小津だから描ける哀愁だといえよう。) 寂しいあらすじの中でほんのりと母子の愛情を混ぜる、リアリズムとヒューマニズムのブレンドがこの作品も素晴らしい。(このブレンド具合も悲哀の味に収まってるのが、真摯で良い。) 時代や国を変えても、この映画で扱われているような人間模様は変わらないから、今でもこの作品は世界中で愛されているのだと思う。「ハリウッドに比べて予算が少ないから邦画が面白くない」なんて意見は作り手の怠慢だということが良く分かる、和服とちゃぶ台の映画。 なお、この作品は小津初めてのトーキー映画だが、劇中に親子が映画館で洋画を見ながら、息子が母に「ねえ、これがトーキーっていうんですよ」と話しかける台詞がある。(しかし、母親は退屈して居眠りしているのであった。)こんなユーモアと映画への愛情が時折挟まれるのも小津シネマの魅力だ。(なお、引用されている「未完成交響曲」(ヴィリー・フォルスト)はこの映画の3年先に発表された映画である。そんな新しい作品を長々と引用するというのも中々今の映画業界では難しいのではないか。) この廉価版発売でもっと小津シネマがポピュラーになってほしい。(現代では文芸ファンの占有物になっている小津シネマだが、そもそもは毎年正月に新作が公開された山田洋二作品のような大衆的存在だったのだから。)まずはこの廉価版DVDの商品企画・販売会社に拍手。 一人息子 [DVD] COS-016 関連情報
「THE MANZAI」で、ダジャレ漫才で注目を浴びたのをきっかけに発売されたと思うのですが、収録されているネタは決してダジャレ漫才の割合は多くありません。ですが、以前から彼らのファンである私にとっては、さまざまなタイプのネタが楽しめるのでむしろうれしいです。あの「お互いを向いてお辞儀をする」のも一回だけですが見られます。「海賊」という漫才では、ダジャレ漫才のスタイルになる前と後で演じたらどうなるか、という試みで同じ漫才を二度やるのも面白いです(それを篠宮腐る前、腐った後と表現しているのもユニークです)。 漫才 する彦やる蔵 [DVD] 関連情報