エロティックというより耽美的。 しかも、人間の情念を感じる作品。 昭和の匂いも感じる。 そういう中で、それぞれの小説の最後には、 ちょっとしたトリックが仕掛けてあって、 読後の余韻が長い。 決して悪い読後感ではないが、 人間というものを考えてしまう。
かつて、この商店街を守るために人を殺めてしまった行介。 彼が営む喫茶店「珈琲屋」にやってくる悩める町の人々を描く短編連作集です。
普通の日々を過ごしているように見える人にも悩みはある。 誰にも話せない・・・でも誰かに聞いてほしい。 人の気持ちの美しさも醜さも丁寧に描いています。 きれいに締めくくるわけではなく、うまくいかずに何らかの教訓を残してくれるようなほろ苦さがしみる。 その苦味がコーヒーの美味しさとうまくマッチしています。
行介と冬子の大人の純情も心にジンジン響きます。
私がこのレビューを書いている今日は30度近く、暑いです。 けど、この本を読むとアイスコーヒーじゃなく、苦味のある熱いコーヒーをゆっくり味わって飲みたくなります。 そんな作品です。
前作同様ちょっとビターな味の連作短編集です。 主人公の行介は過去に殺人という罪を犯した。 刑期を終えた彼は東京の下町商店街で 「珈琲屋」という喫茶店のマスターをやっている。 そこに来る客たちもまた何らかの事情や秘密を背負った人達であったー。
前作と同じで物語そのものが目に見えて分かるような ハッピーエンドではありません。 しかしどこかに救いがあると思わせてくれるので 人情ものとしては最高に良い作品だと思います。 ただ、これはちょっと救われないな・・・と感じたのは 「大人の言い分」というお話です。 読んでいて非常に胸が苦しくなりました。 最後も「うわあ〜・・・これはキツイな・・・」と思いました。 表題作の「ちっぽけな恋」はいいですね。 私的には「ちっぽけな恋」では登場人物が少し可哀相かなと。 「小さな恋」という感じでした。 でもビターな話が多い中スッと胸が救われるような読後感を味わえました。 最後の一文もとてもいいですね。
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