私の中の
ショパンのスタンダードは、長い間、ルービンシュタインだった。
ほかにも、フランソワ、ポリーニ、アルゲリッチ、アシュケナージと聴いてきたが、
ピリスは
ショパンの楽譜に込めた情感の豊かさをあらためて気づかせてくれた。
同じ楽譜から100人百様の解釈が聴けるわけだが、
どちらかというと理知的で端正な男性諸氏の演奏と比べ、
ピリスが醸し出す響きと陰影の多彩さ、
全体の抑揚感、装飾音符の鮮明さと効果は抜群だ。
そのように繊細ながら、音楽全体のダイナミックさや流れは
少しも損なわれておらず、むしろまとまりの良さは群を抜いている。
ロマンテッシズムに溢れた、ピリスの独創的な演奏、
それでいて奇をてらったところのない自然な音楽は、
間違いなく夜想曲集の中でも歴史的名盤と言っていい。
録音もすごく良く、事実、1996年レコード・
アカデミー賞を受賞した名盤だ。
このアルバムを気に入られた方には、
モーツァルトのピアノソナタ全集(
Mozart the piano sonatas) も
お勧めしたい。
ブラームス : ピアノ三重奏曲 第1番ロ長調 も絶品だ!
合わせて、ぜひご堪能あれ。
モーツァルトのピアノ・ソナタの本命は、評判通りやはりピリスであった。