BOCの4thアルバム。
Daft Punk、David Bowie、The Knife、My Bloody Valentineなど大物アーティストのカムバック・ラッシュになっている2013年ですが、中でも一番楽しみにしていたアルバムです。
8年間の沈黙を破り、レコードストア・デイに始まった宝探しのようなプロモーションも、いい感じにこちらの期待感を煽ってくれました。
言わずと知れた名盤「Music Has The Right To Children」、異様なビートが目立った「Geogaddi」、美しく聞きやすい「The Campfire Headphase」と比べると、妙に暗い。
発売数日前に行われたストリーミング・イベント以来、本国イギリス等の音楽関係者や一般リスナーからは極めて好意的な意見が続いていましたが、聞いてみると今までのBOCとは様相が違っていたため、最初は少し戸惑いました。
音はたしかにBOCのそれなんですが、
渋谷のスクランブル交差点で初公開された「Reach For The Dead」や「Palace Posy」、「Come To Dust」など、展開はまるでサスペンスかホラーか何かかというくらい緊迫感に満ちているものばかり。
「Jacquard Causeway」や「Cold Earth」など今までのBOCに近いトラックもいくつかあるけど、一曲あたりの印象はかなり薄めで、最近主流になっているノイズ系に少し近づいているようにも感じました。
BOCを聞いてると子供時代を思い出す、という人は多いと思いますが、今回はなんか数千年前(あるいは後?)の地球に思いを馳せる感じで、SFチック。「Cold Earth」なんていう
タイトルはそれを象徴しているようで。
あまりノスタルジーは湧いてきませんでしたが、当時の若者たちがお薬を持って映画館に押し掛けたという「2001年宇宙の旅」のような、圧倒的な恍惚感があります。
(「Reach For The Dead」のPV終盤、夕日に向かって突き進んでいく映像を見て、「2001年」のサイケデリックな謎空間を連想したのは私だけでしょうか?)
今までの彼らのアルバムにはいつも強烈な印象を残す曲があったもので(個人的には1stにおける「roygbiv」、2ndの「Music Is Math」、3rdの「Peacock Tail」がそれです)、
今回も1つでいいから「名曲」と言えるようなトラックがあればなあ、と思わなかったと言えば嘘になりますが、アンビエント・アルバムとしてはほぼ完璧に近い出来だと思います。
BOCの作品中では間違いなく一番地味ですが、ここ数年のシーンの中で、本作に比肩するアルバムは思い当たりません。
マッシヴ・アタックの4枚目。ア・トライブ・コールド・クエストの4枚目。ジャンルは違えど、どちらもユニークな立ち位置から始まり3枚目までは完璧といっていい作品を出し続け、圧倒的な評価と人気を得た。今で言うところのネ申。しかし、どちらも4枚目から、綻びみたいなのが見え始め(そもそも、人間の作るものだからそれは当たり前だし、それゆえの良さもあるが)、それ以前が完全に思えた分、なんかマジックが解けてしまったような感覚を味わった。
で、ボーズ・オブ・
カナダもわりと似た立ち位置で、上記のような懸念(デビューEP入れると5枚目になるけど)も多少あったのだが、当初聴いた感じではやはり当たってしまったような…? 基本的には同じラインなのだが、全体としてはあっさりとした印象だ。初期のドラッギーな感じは無く、前作のようにメロディラインが強く打ち出されている訳でもない。荒涼としたアンビエント寄りのトラックが主軸で、初期のシンプルさと前作のチルアウト感を足して割ったような印象である。音楽だけでなく色んな“マジック”がネタバレした“今”という時代のサウンドトラックとしては的確にも思えるが、若干退屈というか曲がパターン化して聴こえる感はある。しかし、もちろん完成度は高いし、聴く回数を追うごとにジワリジワリと浸透してかなりの傑作になる可能性も十分孕んでいる。