望遠鏡発明以前の天文学の歴史を貴重な資料で俯瞰した本である。
望遠鏡による直接の観測ができない以上、肉眼による観測データからいかに理路整然とした宇宙観を構築するかが問題となってくる。特に古い時代は神話、
占星術のかかわりで始まった「空への関心」であるが、試行錯誤、紆余曲折を経て発展していく。
それは我々の世界観、人間観、宗教文化、数学、物理、合理的思考と深くかかわっており、天文学の進歩は社会の近代化の指標と言えよう。
また、それも単線論的に発展したのではなく、地動説が天動説に「退化」したり、ギリシア→イスラーム→ネルサンス期ヨーロッパと展開したように、多元的な世界史を理解するよすがとなる。
「昔の人の宇宙観は幼稚であった」と笑うの簡単だが、遠い未来に「21世紀初頭の宇宙観は幼稚であった」と笑われるかもしないかと想像するべきだ。昔の人々は技術的制約にかかわらず知恵を振り絞って偉大な成果を残してきたのだ。与えられた環境で知性の限り、全力を尽くすのが、本書を読んで歴史を学んだ者の真摯な態度であろう。
妙な
タイトルの本だなぁと思いつつ読んでみた。ユニーク。幼稚園から大学までの先生方24名が執筆した天文学の教科書。楽しめる。
教員免許状更新講習のための教科書作りがキッカケとのこと。政権が変わって更新講習の制度は棚上げ状態だが、せっかくなので教科書の方はより一般向けに編集して出版することになったようだ。
タイトルほどのユーモラスさは本文には無い(第5章に少しだけあるけど)。しかし堅すぎるわけではなく、難しいテーマも扱いつつ何とか分かりやすく書こうとしている。総体的に見ると、地味で退屈な本という位置づけになってしまうが、マニアというものは、そういう中にも探求の対象を見出して極めていく人のはず。
カラー写真を並べて「わぁキレイ」と思わせる代わりに、トリビア的な囲み記事に3割くらいを割いている。地味だけど探求しがいのあるテーマの入り口を見せることを重視した結果だろう。
月がいつも同じ面を地球に向けているのは、地球の引力による潮汐作用が原因(月には海が無いのに潮汐作用というのも妙だが)。
太陽の色は実は緑だが、それが無色に見えるように人間の目は進化した。よって緑に見える星は無い(じゃぁ、緑に見える物体は本当は何色なのか?)。
地平線付近の満月がなぜ大きく見えるのか、実は理由は分かってない(地平線の満月でも大きくは見えないときがあるような気がする)。
宇宙が生まれてから現在までを1年に例えると、1月7日まで宇宙は真っ暗だった。夏休みが終わる頃に地球が誕生した。人類の歴史が始まるのは12月31日23時59分よりあと。
などなど。