ドイツ詩と言えば最初に挙げなければならないのはもちろんゲーテ。
ベートーヴェンはゲーテの詩に数曲の作品を残しているが、この歌曲集の中のゲーテの「五月の歌」は歌詞、曲ともに生命感に溢れ絶品である。
また、ディースカウのバリトンもまだ壮年期を迎えたばかりのもので張りと落ち着きがあり、ベートーヴェンの歌曲にはベスト・マッチだろう。
この曲を聴くと改めてゲーテとベートーヴェンの天才だけが持つ時代を超越した本物だけが持つ貴腐ワインのような深い味わいを感じさせる。
他の
ドイツの詩人、特に「遥かなる恋人に寄せて」の詩を書いたアロイス・ヤイテレスの作品は当時のベートーヴェンの心境に最も近いものがあり、・遠くに居る恋人・と当時の・自然に帰れ・の気風に溢れたもので、この二つのワードがキーポイントとなっている。これも秀作である。ベートーヴェンの不滅の恋人と関連つけて聞いてみるのも一興だろう。
このCDに収められているものの他にゲーテの詩によるベートーヴェンの歌曲も「君よ知るやかの国」、その他の名曲もあるのでゲーテとベートーヴェンをマッチングさせた歌曲集の制作も面白いだろう。
それとまた改めて感じるのは、やはりあの歌曲王シューベルトもベートーヴェンの影響が強く「冬の旅」、「美しき水車小屋の娘」などの傑作はベートーヴェンに対する尊敬と影響から産み出されていると言っても過言ではないだろう。
ゲーテとベートーヴェンは1812年の実際の出会いにおいては気まずいものに終わっているが、作品においては美しい結実と成っているので後世の我々にとっては喜ばしい限りである。
この歌曲集を聞きながら
ドイツ・ワインで乾杯でもしようではありませんか。