6月16日(日)毎日新聞の「今週の本棚」では、「小説の現在を問う力作」として津島裕子著「ヤマネコ・ドーム」が紹介されています。「おれって、重症のマザコンだったのかもな。ほんとうの母親を知らないくせに、マザコンだなんて、バカみたいだけれど」。戦後、米軍占領下の日本で生まれた混血児たちが主人公。父と母さえ知らずに、孤児として施設で育ち、社会に出ていく物語。もともと何もないから別にその境遇を悲しむでもない施設の二人の男の子たちと、施設を運営するママのいとこの子どもであるヨン子との、離ればなれには生きていけない共生というテ−マを潜めている。
　　物語に出てくるみんなが一人称で語り始めるとても実験的な文体だ。話す相手が目の前にいる必要はない。ひとりで語り始め、ひとりで語り終えるのだろから。物語を引っ張る恐怖は、孤児たちに付きまとう過去の記憶。
　　記憶といえるだろうか。小さすぎる頃の事件ゆえ、誰もはっきり思いだせない。遠くに(でも小さな子どもにとっての遠くとはどの程度の距離感だろう)見えるに誰かの荒れた庭の中の緑に汚れた池。施設一可愛い七歳の女の子ミキがほとりに立つ。後ろにぐらりと男の子が寄ってきて突然池の中にオレンジ色のスカ−トをはいていたミキを突き落す、という場面をみた3人の記憶はほんとうだったのか、それとも自らを守るために(何から?)、後から作られてしまった記憶なのだろうか。オレンジの記憶が、子どもたちが大人になってもつきまとう。そもそもオレンジの記憶とはスカートの色だけのことだったのだろうか?　子どもたちの生まれる前の核実験の色は?

「水辺」

10年前　試験中に読んだ時には非常に象徴的で
むしろ気持ち悪いもののように思えた「水」。

今読んで見ると非常に痛快で爽快であった

書店でなかなか見つからなくて、あきらめかけていたのですが、アマゾンさんで見つかり、自分の手にできたことは感動でした。多少日焼けがありましたが、７年前の出版ですから、しょうがありません。ありがとうございました。