本書は、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場1位となり、興行的にも大ヒットした映画『
探偵はBARにいる』〈2011・9・10公開、監督:橋本一、主演:
大泉洋〉の原作であり、<ススキノ>
探偵のシリーズ第三弾である。
一読して本作から昭和テイストの懐かしい
探偵モノを感じ取る人は少なくないだろう。北海道の最大の歓楽街であるススキノ(東京だと歌舞伎町、福岡だと中州といったところ)を舞台にその街で生活し、日々起こるトラブルを解決するために今日もススキノの街を奔走するススキノの便利屋と称される〈俺〉が街の仲間から愛されている(時には頼りにされている)
探偵で普段はだらしなく女と酒の自堕落な生活を送り、ズボラでいい加減だったりするのだがここ一番決める時はバッチリ決める様子に『
探偵物語』や『
私立探偵 濱マイク』と同じ匂いを感じ、また、『
俺たちは天使だ!』的な展開(要所要所にアクションとコメディが合わさった展開)にも面白く、ラストにシンミリする件は『
傷だらけの天使』を思わせる設定から展開までまさに昭和の
探偵ドラマの王道を受け継ぐ作品である事がおわかり頂けるだろう。
今回は前作で街で絡まれていたところを救った女性(この時は特に物語に関わっていなかった)である美形の中学の女教師・安西春子の依頼で教え子である中学生・中島翔一を不良グループの巣窟から救い出した縁で〈俺〉と趣味趣向の共通から意気投合した翔一少年がある日、親友の惨殺死体の発見により一緒にいた翔一本人も行方不明になり、翔一少年の行方を捜すために〈俺〉が奔走し、やがては少年の通う中学校や地域の障害者施設反対運動に絡んだ展開となっている。
本作でもクールで頼もしき相棒である北大生・高田(『
ルパン三世』における
次元と五ェ門を足したような雰囲気の頼れる相棒で映画で高田役を演じた
松田龍平がピッタリくる)、〈俺〉に何かと情報を教えてくれる妻子がいながら同性愛者という新聞記者・松尾、〈俺〉に積極的ではないものの協力時には支援する桐原組組長・桐原とその側近・相田といったお馴染みの面々を始め、
本作のヒロインとなる中学の美人女教師・安西春子と本作のキーマンとなる中学生・翔一、今回の事件を担当する道警の刑事・種谷(タネヤ)、翔一少年の失踪に関係する元映画館事務員・阿部光子、施設反対の人物で学校で生徒たちに嫌われているベテラン理科教師・村野健介、桐原の知り合いで後暗い過去がある防犯協会理事・茅部俊範、翔一の副担任で五十年輩の
英語教師・鷺坂真人とその姉で同居する看護婦長・鷺坂富美子…などなど
事件の捜索を進めていくうえで浮かび上がる少年が通っていた学校や教師たちの問題(本作が発表されたのが20年前なのでインターネットが普及している現在なら学校裏サイトや携
帯電話といったアイテムを盛り込むところでしょうが…)、そして障害者施設反対運動に突き当たるのだが、本書の特徴として
探偵である〈俺〉の軽妙な語り口である文体が読んでいて面白い(一例をあげれば、行方不明の翔一少年の近所の聞き込み(P.154)で無関心なオバサンの反応に対する
探偵〈俺〉の反応や相棒・高田にある推理(P.202)を話したあとに「まるで、テレビのミステリ劇場みたいな筋書きだな…」と酒井和歌子を力説する高田のくだりなど…)。
他の方が指摘されているように本作では真相が明かされる場面でグロイ描写も出てきますが(映画なら明らかにR‐15といったところか)、事件に渦巻く複雑な人間模様が描かれており、何度もいうようだが昭和の
探偵モノ(ドラマ)の醍醐味が味わえるシリーズだと思います。上記の
探偵ドラマ好きにはこの〈ススキノ
探偵〉シリーズはオススメです。
余談ですが『
名探偵コナン』81巻の『青山剛昌の名
探偵図鑑』のコーナーで本作の主人公である
探偵〈俺〉が紹介されています。
今や「
探偵はバーにいる」シリーズで人気作家の著者ですが、この本に代表される「奇妙な味」の短編小説群も秀逸です。
幻想、恐怖、ユーモアとさまざまな要素が入り交じった感じは読んだ後に贅沢な余韻を味わうことができます。
古くはサキの小説が好きな方にはお勧めです。
結構厳しい評価が出ている本作ですが、個人的には結構楽しめました。
全体の構図は古くさいし、途中少し中弛む様な展開もあったが、
それをカバーしてあまりある役者の演技がリカバーした印象。
大泉洋のハードボイルド気取りのちょっと抜けた
探偵と、
ひょうひょうとしながらも、いざというときには頼りになる
松田龍平の助手のコラボレーションがなんともたまらん!。
敵役の高嶋政伸の意外さ、謎めいた小雪の演技…いずれも
良い演技でした。
脚本がもうひとつぴりっとしないところが残念だったが、
それでも豪快なラストシーンはなかなかに「ここまでやるか!」
という感じで楽しみました。
次回作もあるそうなので、もう少しスピード感のある脚本
が魅力的な俳優陣を生かし切る作品となることを期待します!。
滅茶苦茶良かった!
作品全体がテンポよく、あっというまにラストでした。
大泉さんと松田さんの絡み、大泉さんの泥臭さと小雪さんの上品な美しさ
高嶋さんの演技にもギョッとしました。
原作を読んでいましたので、大泉さんが正直こんなに
探偵をうまく演技出来るとは思って
いませんでした(ごめんなさい)大泉さんは、天才?努力家?とにかく良かったです。
この凄さを、うまく文章に出来なくて残念です。
DVDにはやくなってほしいです、映画の余韻に浸りたくサントラ購入しました。
音楽も飽きる事なく、浸れるCDで満足!
娯楽映画の王道を行く、理屈抜きで楽しい作品だが、私が注目したのは、
ボーナスディスクに収録されたメイキングの方だ。
キャストや
スタッフの素顔を垣間見ることができ、また撮影現場の熱気が伝わって来てこちらも楽しめるのだが、楽しいだけではない、あの厳しい現実も盛り込まれていたのだ。
前半の札幌ロケの進行に沿って、さりげなく画面に挿入される日付が、最終日に“あの日”を指した…
2011.3.11
しばらくのブランクの後、東京で再開された撮影の現場には悲壮感が漂っていた。日本中が混乱し、悲嘆に暮れている中で、娯楽映画の制作を続けるのは辛いものがあっただろう。
そのような逆境を乗り越えて生まれた作品であることを知ることで、本編をさらに熱い思いで観ることができると思う。
だから、多少高くても是非
ボーナスディスク付きの3枚組をおすすめします。