FDTD 時間領域差分法入門
これまで、アンテナ伝搬や電磁波工学に関する研究を行ってきた人が、これからFDTD法を勉強するという際に、適していると思う。なぜならば、最も分かりやすいレベル・内容でFDTD法について書かれており、FDTD法の初歩的な段階からアンテナの解析への応用の方法についても述べられており、分かりやすく、使いやすいと思う。従って、この本をすすめたいです。
英会話の定番表現505 (研究社ブックス―get it)
会話の上で「切り返し」という技術は、母国語でない言語においては非常に難しい。私の知っている外国人で、ほぼ完璧な日本語を操る人でも、切り返しの技術には若干の違和感を覚えることがある。本書は英語における切り返し表現を、日本語訳のあいうえお順に並べて解説した本である。
あえて弱点を言うなら、まず、類似の意味をもつ表現がばらばらに散らばって出てくること(ある程度参照をつけて解決の努力がみられる)。次に、同じ意味の言葉が何カ所も出てくるが、各々を区別して扱う必要を感じない(あるいは各々の区別についての解説が不十分な)場合が多いこと。この例として、「ワ」のところを見ると、順に「わかった。」「わかった。」「わかった?」「わかってる。」「わかりました。」「わかりましたか?」「わかりますか?」「わかりません。」「わかる?」と続いていく。これは例えば日本語の「そう?」「そうか?」「そうだろうか?」「そうですか?」「そうなのか?」「そうなんだろうか?」「そうなんでしょうか?」「そうなんですか?」を、別々に、注釈なしに外国人に覚えさせることに等しいのではないか?どの表現にも対応できることは確かに大切だとは思うけれど、使い分けを知らなければ使えない。解説は必ずしも十全でなく、また、どうも例文が覚えにくい。本書の主題はsituationがわからないと使えない表現なのに、例文のない語句も少なくない。
但し、そうはいっても、基本的にはよい本である。この種の本は貴重で、大きな不満はない。数日後に短期間渡米するけれど、さてどれほど役立つか。
愛のコリーダ [DVD]
犯罪をテーマに、猥褻騒動で国家と闘った大島渚の傑作である。映画からドラマチック性を排除し、淡々と二人の性生活を描き、狂気のラストまで人間の内面の犯罪を見事に描き出した。性と狂気の裏表を演じた主演二人に、ご苦労様と言いたい。
実録 阿部定 [DVD]
いろいろな意味で驚異の映画。まず第一に、伝え聞くところによると、製作予算が600万円ちょっとしかなかったらしい。なのに立派なセットもちゃんと作っているし、ロケにも行っている。さらに出来上がりにケチくさいところが微塵もない。
つぎに宮下順子の迫真の演技。この時期の彼女は充実作が目白押しで、本当の意味で体を張って生きている、という感じがする。「(阿部定が)いろんな偽名を使って生きてきました云々」という冒頭のモノローグも素晴らしい。
このあとすぐに若松孝二と大島渚が同じ題材で「愛のコリーダ」を製作するが、アチラはわが国初の「本番映画」を作ったというだけのこと。童貞を捨てるために、初めてソープに行く高校生がはしゃいでいたようなもので、映画としての出来はハッキリ言ってイマイチですね。完成度はこちらがはるかに上を行っている。まさしく天才田中登の面目躍如たるクリーンヒット。
淫花伝1 「阿部定」下巻 上村一夫完全版シリーズ
夜空を見上げながら「きっと今時分が一番きれいなんですよ 空気が冷たくなって澄んでるから」と、定がつぶやく。
この場面を境に、定の視野からの、広々とした空間の描写は急激に減少し(背景としての描写は除く)半径数メートルの近視眼的な描写がふえてくる。
まさに閉塞感の表現であり、上巻から暗転することとなる。
閉塞した管の中をまっしぐらに突きすすんだ結末が、『極限の愛の形』と帯の惹起文にあるのだが、私は少し違う印象を持った。
極限と感じたのは、外部の人間の視点に過ぎない。
おかしな表現だが、彼女は、情夫に対しても情欲に対しても、まじめに取り組んだ結果、あのような事件となったように思う。
世間の眼からは猟奇事件でも、彼女の基準では必然の行動なのだ。
時代は変わっても、「彼氏を喜ばせるには」といった雑誌の記事を暇つぶしと言いながら、結構真剣に読む一部の女性達も同じ根っこを隠して生きている気がするのです。