中島みゆきライヴ!Live at Sony Pictures Studios in L.A. [Blu-ray]
NHKhiで放送されたのを録画してよく見ていたが、Bモードではないただのステレオで音が今一。アンプで情報を表示させるとAAC144kbps2ch。
このブルーレイはdts1536kbps5.1ch。1曲目の「この空飛べたら」がはじまるとすごいサラウンドでびっくり。スタジオは中島みゆきを囲んで演奏者が配置されているのだけど、中島みゆきのすぐ近くで楽器に囲まれて聞いている感じ。音がはっきりしていて楽器の細かな音の変化もよく分かる。録画があるからと迷っていたが買ってよかった。
中島みゆき絶対矛盾的自己同一の世界
1975年ヤマハのポップコンで華々しくもグランプリを受賞した「時代」を船出として歌手中島みゆきの旅は始まった。デビュー当時のアルバム(「みんな去ってしまった」)に「死んでも旅をつづける女」(「流浪の詩」)と自らを見定めた彼女の旅はいったいどこへ行こうとしていたのか?その航跡をたどってみると多くの謎があることが分かる。なんといっても最大の謎は70年代末頃から独特な失恋歌の世界を綴ってきた彼女の内的な動機である。著者はそれらの歌のリアリティーには現実の物語が重なっているにちがいないという大胆な仮説を提出している。この仮説が真なるものであるのかどうか意見が分かれるにちがいないが、少なくとも彼女の失恋歌が単なる虚構でないことははっきりとみえてくる。
本書のタイトルにある「絶対矛盾的自己同一」という一見難解そうな用語は元々哲学者西田幾多郎の有名な造語であるが、それは必ずしも奇をてらうためではなく、中島みゆきの世界観を言い表すための適切な表現(概念)であるということが後半部で語られている。たとえば「あした天気になれ」という歌に「雨が好きです 雨が好きです あした天気になれ」というフレーズがあるように、彼女の歌にはなぜか矛盾した表現が満ち満ちている。それは彼女が世界の矛盾をありのままに見つめ受け容れながら、なおかつ世界は矛盾ではなく合一した世界であるという西田哲学の真髄に近い世界観があるからだと解説される。その彼女の世界観が夜会のテーマ曲「二隻の舟」にも隠されているのだと結論部で明かされる。全体的に硬質ではあるが一つのテーマにしたがって論理的に構成された珍しい本格的評論ではないかと思う。
大吟醸
ベストアルバムということで ほとんどのヒット曲が収録されている
この間初めてコンサートに行けて最前列から見ることができたのだが
歌もさることながら その美しさに驚いた
きれいなドレスに身を包んだ彼女はまるでバービー人形のようだった
私は特に“空ときみのあいだに”が大好きなのだが 生で聴いた時には感動して涙が出たほどだった 彼女の曲はどの詩も心にしみわたってくる
魂の叫びのようにも聞こえてくる
わが美しき故郷よ
最初に歌詞カードに触れてみたとき。 「あ、スケッチブックのような紙が使われている。」―――。
その肌触りがもうすでに何かを伝え始めているようです。
作品は、記憶の中から淡いブルーをゆっくりと伸ばしてゆき、翠薫(すいたい)の景色を浮かべ、徐々に天然色へと色づいてゆきました。そして序曲が終わった後の2曲目のイントロ。この瞬間に出会ったとき、何も感じないなんてことはできませんでした。彼女の声が乗ったそのとき、人々のこころに芽生えたものは何と優しい勇気だったことでしょう。決して仰々しい鼓舞ではなく、コーラスワークやリズム隊の自然な追い風に包まれながら、シンガー畠山美由紀特有の、品のあるたおやかさが聴き手を前へ導くのです。その声は実に青空のにおいがしました。
3曲目は想いを主題に託し、ジャズ・ソウルを歌ってきた畠山美由紀の真価が発揮されます。島裕介のトランペットも気持ちを歌っており感動的ですらあります。
そして中盤のハイライトである、5曲目と6曲目。5のポエトリーリーディングで畠山美由紀の真摯さが改めて血が通ったように、こころの中へやってきました。震災以来、それへ微塵も目をそらしてこなかった彼女の本当の気持ちが表れており、今作のすべてを結び付ける根源です。そして5から連続して始まる6「わが美しき故郷よ」の出だし。日本語を歌う際の彼女の声は、水彩画の筆のようだとかつて記したことがありますが、当にこのうたでは気仙沼の景色、凛とした空気の冷たさ、春の萌芽の息遣いをその声で清楚に描いてゆきます。畠山美由紀というシンガーにとって渾身の名曲になっていると紹介できます。
もうひとつ、10「花の夜舟」という佳作が新たに生まれたことも記しておきたいですね。波がゆらゆら揺れている様子などを表すことばに“たゆたふ(揺蕩う)”というのがありますが、ちょうどそれをみせるようなピアノと、風のような二胡による郷愁はたまりません。また畠山氏の東洋的な美しさで佇むことができるその才能が発揮されている曲だともいえます。
さて、1曲目「その町の名前は」は、おおはら雄一の作詞でした。すばらしい1曲です。素朴なことばの佇み方です。畠山氏の気持ちや東北の方々の気持ちを静謐につづったことばです(それをしなやかにうたえる彼女も印象的)。今作は、このふるさとを描くというテーマが非常に自然な質感で音になっているんですね。そういえば過去作『Wild&Gentle』の中に「あなたの街へ」という楚々として控えめな名曲があります。彼女の大切な気仙沼の風景が水彩画のように淡い色で、あるいは陽炎を油彩であらわすように描かれています。しかし3月11日の数日後、“美由紀、わたしたちの知っていた景色は、もう失くなってしまったよ”と友人からきかされたそうです。それからというもの、畠山美由紀がひとりの歌い手として一生懸命つとめたかたちが今作ですし、これからの彼女のコーナーストーンとなるであろう傑作です。願わくはこれからの東北を、ささやかにともし続ける灯台になってほしい作品でした。
この、スケッチブックと同じ歌詞カード。そこにスケッチされたものは、きっと個々が目を閉じてうかぶ、ふるさとなのだと思います。これまで続いてきた景色、そしてこれから再び描きたいふるさと。日本人みながこころのなかに持っている、美しいふるさとをこの一枚が、絵のように体現してくれていました。イラストは、同郷のイラストレーター奥原しんこさんの書き下ろしです。
あぶな坂HOTEL (クイーンズコミックス)
コミックスをオンラインで買ったので、帯にある文章を見るまで、
本当に中島みゆきさんの曲名からきているとは知りませんでした。
「あぶな坂」をモチーフに描かれたオムニバス短編集です。短編といっても1話40P位ありますが…。
(※「あぶな坂」はアルバム「私の声が聞こえますか」に収録されています)
(※また、アルバム「いまのきもち」にも再録音バージョンが収録されています。
「なんで今頃『あぶな坂』?」と思ったのですが、こちらからイメージしたのかも?)
同曲「あぶな坂」をベースに描かれているのですが、
読んでいると「夜会『24時着 0時発』」「ミラージュ・ホテル」を思い出します。
この世とあの世の狭間に建つ「あぶな坂HOTEL」。
ホテルの女主人の容貌はこころなしか中島みゆきさんに似ています。
「あぶな坂HOTEL」4本と、巻末にショートストーリー「天使のはなし」収録。
萩尾先生の短編は、いつもながら密度が濃く良質です。