前作のぶっ飛んだ設定そのまま、有馬と千尋のスタンスが、
徐々にハッキリしてきました。
恋心を自覚しながら「伝える気ゼロ」の有馬と、
恋心無自覚なくせに「戸惑いを周囲に伝えまくり」の千尋。
千尋がこんななので、諦めるに諦めきれず、苦労する有馬が面白い。
色々そつなくこなせる人のアキレス腱が恋愛って王道だけど萌えるよね。
しかも有馬は考えてることはちゃんと恋する男の子なくせに、
やってることはただのブラコンレベル。
うっかり言ったりやらかしちゃっても、
どこまでいっても「妹大好き」な兄貴で通用するレベル。
嫉妬も優しさも「家族」として千尋を大事にすることが
身についちゃってるのよね。
だから、千尋も戸惑いながらすくすく育ってる。
そもそもこの二人、家族を恋愛対象に見ることへの罪悪感が
清々しいまでに無いのよね。このドライな感じが逆に新鮮。
両親にもそれを許容している節があって、やっぱりここにもドロドロはない。
それは生い立ち故かなあ……ww
ここまで「家族」なぬるま湯に浸かってて、
どうやって恋愛モードにギアチェンジするのか逆に気になります。
ギアチェンジ……するのだろうか?
『金魚奏』で絶大な支持を得たふじつか雪さんの読切集です。
帯の裏側に「せつない恋だけ、4編あつめました。」とあり、本当にせつない読み切りが4本採録されています。
収められた4本の読み切りはいずれも『金魚奏』読み切り→連載化以降に描かれた物です(連載化が平成18年で連載終了が平成19年ですので表題作の『空の少年』/平成18年は『金魚奏』連載と同時期に描かれた作品という事になります)。
読み切りが連載化された前作を読んでいる方々はどうしても『金魚奏』と比べてしまうと思うのですが、その点だけで評価してしまうと「連載作品」のような読み応えはなく、また「泣いてしまうほど」という「直球」のものはありません。
これは読切集だからという理由よりも、ふじつかさんが「巧くなっている」というのが大きいです。
『金魚奏』連載時よりふじつかさんの漫画家としての力量が上がっていて、読んだその場で「ワッ」と大泣きさせられるような展開ではなく、もっと穏やかながらも深い、宝物のような感動が胸の中に灯り、広がった事に少し経ってから気付く感じです。
一拍おいて感動させる作品を描けるようになってふじつかさんは確実に上達したと思います。
作者が香川出身ということでよく行く本屋にサインが。それがきっかけで手にしました。
全2巻。短い作品ですので、ふと手にとって読むつもりで全然大丈夫です。
この作者の表現力の巧さは何ですか? キャラの表情とコマ割りがいい。キャラも魅力的。
耳の聞こえない人が傍にいるってどういうことなのか、何気ないキャラのやりとりからも気付かされます。
『蝉時雨』って続きは出ないのかな……
全体的にごちゃっとしてて見にくかったです。
それから個人的な意見ですが、表紙の主人公がもっと豪快?というか活発なイメージだったので、思ったよりおちついた子で「あれ?」って思いました。
イメージが残るようなストーリー&キャラクターがいなかったので☆3にさせていただきます。
かなりぶっ飛んだ設定には驚かされましたが、
基本的に兄妹ともに皆に愛されまくっている上に、
天然で幼くていちいち可愛い反応をしてくれるので、
不思議に爽快な読後感でした。
真実を知った(ばれた)ところで、
急に相手に対する立ち位置を変えるのは無理で、
でも、今のままでもいられなくて。
彼らは彼らのスピードで近づいて、
気持ちを受け入れていくのでしょうね。
事情が事情だけにこれからどんなハードルが待っているのか、
(なんでもハードルになりそうで)全く想像もつきませんが、
よく考えて見ればラブコメとしてだけでなく、
ファミリーコメディとしてもいける美味しい設定でもあるので、
これからこの設定をどう生かしていくのか楽しみですね。
期待しています。
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