このCDには、フランツ・リストの曲の中でも、「メフィスト」シリーズ にこだわった選曲となっています。メフィストワルツ第1番は多くの演奏家によるプレイが残されていますが、メフィストワルツ第2番以降の作品はあまり紹介される機会は少ない。そんな中このCDでは、それらの曲を聴くことができるのです。作品自体は晩年のリストらしく、かなり前衛的な曲が多いのですが、シンプルな中にかつての「超絶技巧」的な演奏法がちりばめられ、不思議と耳に残る、まさに「メフィスト」の演奏といった感じです。かなりマニアックな作品集といえましょう。
カツァリスはどちらかというと無理に対位法を目立たそうとするなど、変わった演奏が多くて、このCDも最初はあまり期待していなかった。しかし聞いてみると、荘厳に一楽章が始まったと思えば、3楽章につれて熱く切迫していく様子は見事だった。やはりこの人の指がまわるので、自分が思っているようなバッハ像を描ききれているみたいで余裕もあり、聞いていて軽妙で楽しい。
選曲も有名なアリアが入っている第5番が入るなど、初めての方でもいいのではないだろうか。私の希望としてはぜひ全曲版を録音してもらいたかったというのが正直な感想である。
内声強調や音のベクトル操作など、カツァリスは音で遊びまくることで有名ですが、このワルツ集はそれが最も聴き取りやすいCDだと思います。
ショパンのワルツには様々なエピソードがくっついて回ることが多く、大抵のピアニストがそれに引きずられて、だらしのないフレージングやルバートを行っているのですが、さすがはカツァリス、曲の構造を的確に射抜いた上で、果たせぬ愛ややるせなさまで表現しています。ピアノの音も見事。「華麗なる大円舞曲」の冒頭を聴いてみましょう!ここまで弾けるピアニストはまずいません。
「遊び」の類が気に入らない方は拒絶するかもしれませんが、ここにあるのは間違いなく第一級の技術、解釈、音です。高度な「分析力」が高評価された「ショパン:バラード集&スケルツォ集」も聴いてみて下さい。
シューマン「子供の情景」ホロヴィッツの演奏が有名だが、音質が悪いのは皆の知る所。で、86年デジタル録音のカツァリスの演奏:美しい。
多くの困難な作業をしてきただけの事はあって、深い曲の解釈は、自然が奏でる数々の音風景に等しく、ときに小鳥のさえずりの様に、小川のせせらぎの様に、小風のささやきの様に、優しく 知らないうちに通り過ぎるが、時に 嵐や 小雨 濁流 曇り・・・ といった、立止ったり 沈思黙考したり、注視したりする面も しっかり 表現されている 素晴らしい 演奏だ。心身が豊かになるようだった。
欲を言えば、もう少し 重低音が響いて欲しかった。最低音部のパートが ハッキリはしているが 物足りなく思ってしまう。だからと言って、高音部がハッキリし過ぎていて 棘棘した演奏でもない。多分 そこを充足すると シューマンの意図を逸脱してしまうのかもしれないが。ルイサダ(ジャン=マルク)のような癖のある「子供の情景」も聞いてみたいなぁ。
そういう意味ではカツァリス演奏のショパン「ワルツ」とは全く違った雰囲気のCDだった。
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