歌舞伎だけに留まらず様々な分野で活躍する十八代目中村勘三郎。
彼を取り巻く「家族」「戦友」「歌舞伎」の人々たちとのエピソード。
読み進めるに連れて目頭が熱くなるのを覚えました。
笑いあり、涙あり、その根底にあるのは愛情でした。
そして中村屋の飽くなき歌舞伎に対する情熱がひしひしを伝わる一冊です。
このボックスに収録されているのは「春興鏡獅子」「義経千本桜 川連法眼館の場」「仮名手本忠臣蔵 五段目、六段目」「一本刀土俵入」「野田版 鼠小僧」「隅田川続俤 法界坊」「コクーン歌舞伎 三人吉三」「身替座禅」「今昔桃太郎」、そして子役時代の映画『アッちゃんのベビーギャング』『ベビーギャングとお姐ちゃん』です。
すべて、この勘九郎箱でなければなかなか観られない作品ばかりです。特にお薦めの演目を1つ選ぼうと思いましたが、どれも甲乙つけがたい作品ばかりです。
(それでも敢えて選ぶとすれば、個人的には「仮名手本忠臣蔵」と「鼠小僧」でしょうか)
1枚あたりの単価で言えば決して高い商品ではないので、勘三郎さんのファンにはぜひご購入をお薦めします。日本語字幕も付いているので、初心者も楽しめます。
子供時代の話、父親(先代勘三郎さん)のこと、友人のこと、芸のこと。インタビュアーに語る、という形式で書かれていますが、まるで読者が直接インタビュアーになって聞いているような気持ちになり、生き生きとした話し言葉を堪能させてもらえます。 勘三郎さんの語り口の歯切れよさは、勘九郎さん時代から大好きでした。ちょっと乱暴なことを言っているようでも、決して嫌な印象にはならないところは勘三郎さんの人柄だと思います。勘三郎襲名で新しい一歩を踏み出された今、10年前の、もう少し若い頃の勘三郎さんにもう一度触れてみるのもよいのではないでしょうか。この語り口をこれからもずっとずっと聞かせてもらいたいものです。 歌舞伎の話がもちろん中心ですから、「芸」についてもいろいろ書かれています。「心のない型からはいるな」という先代の言葉、「役になりきれば、おのずと型はでてくる」話など。相手方や観客との掛け合いの妙など、芝居の「一回性」のぞくぞくするような楽しさを語ところを読むと、すぐにも観劇に飛んでいきたくなります。 まるで読者が直接インタビュアーになって聞いているような気持ちになる、と書きましたが、これは勘九郎さんのお話の良さのみでなく、編集した方の力も与っているとおもうこと、一言添えさせていただきます。 続編の「勘九郎ひとりがたり」も読みたくなります。
写真満載ですね!これからの活躍も期待しています! どんどん素敵になっていく勘九郎さん応援します
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