十八代目勘三郎さんのそれまで、をざっと知りたい読者には良いかも知れません。思い出に残ったポイントが集められていますので。でも、「思い出したまとめた」ことによって、その当時の勢いはおさまっていて、文章は落ち着いているので、「勘九郎とはずがたり」などの話し言葉の元気さが好きなファンとしては面白さが少ないのです。出てくるお話にも、どこかで聞いたこと、も多いです。

本としての収録が、誕生からの時間通りではなく、平成16年のお正月から始まって、昭和30年に戻る、という、まあ、この歳にそれまでを振り返って、という編集なのでしょうが、なんだかかえってそれがややこしく感じられました。この構成はあまり成功、とは言えなかったかも。

と、言うわけで、初めて十八代目勘三郎さんをどういう人かざっと知りたい方にはいいかも（舞台年譜も付いているし）でしょうが、これまで良く知っている人にはどうでしょうか、という本。