甲賀三郎 商品

甲賀三郎 日本探偵小説全集〈1〉黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎集 (創元推理文庫)

全十二冊からなる東京創元社の日本探偵小説全集。その第一集は、黒岩涙香、小酒井不木、甲賀三郎の三人の作品を収録しています。黒岩涙香といえば、『巌窟王』など海外作品の翻訳ならぬ翻案で大好評を博したことで有名ですが、ミステリの翻案も多く、また、たった一作ですがミステリの創作もあって、それがここに収録された『無惨』。岡っ引き上がりの老練なベテランと、まだ若いながら近代的な科学捜査法を修めた二人の警官が、それぞれの方法で殺人の犯人を探し出すといった内容。句読点が少ない文体で、慣れるまで読みづらいのをのぞけばなかなかにおもしろい。黒岩涙香の作品は、他に翻案ものの『血の文字』が収録されています。小酒井不木は、当時の東北帝国大学の助教授に任命されるぐらい生理学・血清学の権威で、その作品も医学関係のものや異常心理・変体心理を扱った、いわゆる変格ものと呼ばれるものが多く、独特の味わいをもっています。『痴人の復讐』『恋愛曲線』『愚人の毒』『闘争』の四短編が収められていて、『愚人の毒』以外は異常心理を扱ったもの。中でも『恋愛曲線』は、失恋した男の心理と不可思議な実験を扱ったもので、異様な迫力に満ちています。甲賀三郎は戦前きっての本格派と目される人で、ここに収められている『琥珀のパイプ』『蜘蛛』『黄鳥の嘆き』『青服の男』はどれも切れのよい短編の佳作です。が、代表作となると、本格ミステリではない長編の『支倉事件』が挙げられます。実際にあった事件を元にしているそうですが、犯人を追って警察の行動を細かく書いている点、警察小説のはしりともいえるでしょう。また、ここに出てくる犯人は一読忘れられない強烈な人物、戦前戦後を通じて、日本ミステリ界における名犯人像です。本書で取り上げられた三人の作家、まだまだ作品があるでしょう、できれば各人で一冊出してほしかったですね。 日本探偵小説全集〈1〉黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎集 (創元推理文庫) 関連情報

甲賀三郎 支倉事件

現実の「島倉事件」を見事に小説化した甲賀三郎の代表作だ。大団円にいたる過程をつぶさに時系列で追ひ、読む者を厭かせることがない。後年の松本清張を彷彿とさせる無駄のない筆力はさすが甲賀だ。一読、お勸めしたい。 支倉事件 関連情報




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