著者の村山由佳さんは、この作品の後の作品で
直木賞を受賞されただけあって、とても文章力のある作家さんだなと思いました。特に描写が巧で、情景描写、心理描写ともすばらしく、小説の世界にす~っと入っていくことができ、どんどん引き込まれていきます。それだけ期待しながら読み進めていただけに、ラストがあまりに唐突で安易な印象を受け、どこか消化不良な気がしました。執筆途中で力つきてしまったんじゃないかという気さえしました。これだけの力がある作家さんならもっとラストを描きこめたのではないか、と思います。まだこの作品しか読んでいないので、次の作品に期待したいです。とはいえ、切ないラブストーリーが好きな人には十分おすすめできる作品だと思います。
ほかにも書かれている方がいますが、Amazonでのレビューだけがこれだけ低いのに驚きです。万人向けの小説ではないにしても、正直驚きました。個人的には、子供の頃からひとりで背負ってきた(と感じていた)思いや考えを、正しい、間違っていると判断されることなしに、やっと誰かに聞いてもらえた気持ちです。ひとつだけ未解決だった問題が、問題ではなく、これでいいんだ、と思わせてくれました。この本に嫌悪感を感じた方がいる分だけ、救われた人もいるのではないかと思います。