‘「悦楽共犯者」には性交の場面は出てきませんが、私にとって最初のエロティックな映画ですし、なによりも自由をめぐる映画です。’
(『シュヴァンクマエルの世界』より引用)
ピチャピチャ…クチャクチャ…強調される擬音。 粘り気のある映像。 本作は他人の秘密 → 他人の性癖を見る映画です。
性癖…気持ち良いのは当人だけ
…なのでしょうか。
この映画のストーリーは単純。6人の‘行為’を描くだけです。 目的は性的興奮。 6人の行動はそれぞれに軽く接点がありますがそこに(普通の意味での)ドラマは生まれません。‘行為’そのものだけがドラマになっています。
本作にはセリフが一切ありません。幻想的で意味ありげで不吉でそれでいて可笑しな…映像だけで語られます。(ブラックコメディとしての捉え方も
アリ)
そこで語られるのは異様なまでに繰り返されるフェティッシュな‘行為’…。 衝動を抑えられずに、人目を避けて一心不乱に取り組む恍惚とした表情…。 これに耐えられない方に本作はお勧めできません。 ひたすら気持ち悪いだけでしょう。
だけど、迷いのない虚ろでしかしながら真直ぐな瞳、秘かな愉しみに酔う表情を見てほしい。 その表情に…息を呑む…。(えっ… そんなの見たくないって? …それもある意味当然だけど…)
本作は…正直いって気持ちの悪いのだけど… くすぐられる気持ち良さ(≒面白さ)が確実にあります。(私には)
ところで、シュバンクマイエルといえばクレイアニメ。 でも本作には冒頭から45分以上挿入されません。
そして6人の‘行為’がスパークする時(幻想世界に突入する時)クレイアニメが劇的に挿入されます。
本作におけるクレイアニメは欲望のメタファーのように見えます。クレイアニメが全開になるとき、それがこの映画のクライマックス (というより‘エクスタシー’か) と重なります。‘性交のない最初のエロティック映画’とは上手い表現だと思います。
ラスト、彼らの秘かな愉しみはキチンとエクスタシーに達します。(目的もなく野原を歩くラストにはなりません)
本作の構成について少し書くと…‘行為’を異様なほど反復するのは、シュヴァンクマイエルの短編映画の延長といえます。(本作は25年暖めてきた短編用の企画をスープアップしたものだそうです)
そのため、長編映画としては単調に感じます。正直に言って傑作『
アリス』や『ファウスト』 には及ばない用に感じます。けれど‘短編’作家としてのシュヴァンクマイエルの本領が発揮された怪(快)作なのは間違いないでしょう。
シュヴァンクマイエルもとうとう78歳になりました。だけど健在。まだまだ現役です!。本作以後のシュヴァンクマイエルは次第に‘長編’作家としての成熟をみせるようになっています。
今年は新作『サヴァイヴィング・ライフ ‐夢は第二の人生‐』のソフトも出たし、2015年には次回作『昆虫(仮題)』の予定もあります。
‘戦闘的シュルレ
アリスト’爺さん。 更なる活躍を期待しています!。
(あと…全作品のブルーレイ化もね)