Dalziel & Pascoe シリーズの一冊 (2004). 倒叙形式の本格ミステリーだが,この著者ならではの巧妙を極めた語り口で,予想もつかない展開を見せ読者を圧倒する.基調となるのは 19世紀アメリカの女流大詩人 Emily Dickinson の多数の詩で,題名もそこから採られた.とは言うものの,性的表現のイギリス流隠語が見事な程に滔々と流れ,これがアメリカでも通用するのかな,といささか心配.とかく硬くなり勝ちな本格ミステリーが Dickinson の怪奇な詩と盛大な性的隠語のお蔭で奇妙に人間的な雰囲気を与えられ,読むほうはじっくり楽しめる仕掛になっている.この殆ど
暗号みたいな
英語を見事に訳し抜いた松下祥子氏の力量は掛値なしに驚異的で,いくら褒めても十分ではないだろう.イギリスに興味を持つ向きには絶対推薦.
1000人の
チェロコンサートでコンサートマスターをされていた林先生がリリースされたCDということでさっそく買ってしまいました。(解る方には解るお話ですね)ピアノと
チェロの音が本当に目に見えるような気がしました。音に溶けこんだ情感がひしひしと伝わってきます。それから。ピアノが最高!
チェロと全く対等、いやそれ以上かも!とにかく、
チェロが好きなあなたには必聴の一枚です。
有名な小品を寄せ集めたピアノ・アルバムがあるが、これはそれと似て非なるもの。
もっと個人的で、親密で、「濃密な音楽」。
「音を沈黙で測る」ピアニストならではの選曲と演奏。秋から冬にかけての必聴盤。
10月の終わりの晴れた午前中に、「ヴェニスのゴンドラ(メンデルスゾーン「無言歌」)」が聞こえてくると、
すべての作業の手を止めて聴き入ってしまう。
自選された全18曲のそれぞれに、奏者自身のコメントが付いている。
1曲目:グリーグ「
アリエッタ」
「わずか23小節のさりげない小品。30余年にもわたって気の向くままに書きつづった、
グリーグの音楽随想集ともいえる<抒情小曲集>の第1曲。
美しいメロディが、繰り返し静かに歌われるごくシンプルな曲だが、
弾く度に初めて触れたような新鮮な感覚にさせられる」と書いてある。
この1曲目から、彼女が作り出す音楽世界に引き込まれる。
3曲目、メンデルスゾーン無言歌集「ヴェニスのゴンドラ」。”行間を読む”という言葉があるが、
この曲を弾く彼女のピアノを聴いていると、音と音の間に広がる沈黙に、おもわず耳を澄ましてしまう。
4曲目、軽快に指がまわるメンデルスゾーン「紡ぎ歌」の後に響く、シューマン「子供の情景」。美音と情感。
続いて奏でられるワーグナーの「夕星の歌」。リストが編曲したタンホイザーの抒情世界。
この曲を聴くだけでも、このアルバムを入手する価値があると、書きたくなるが、
そんな演奏が、まだ何曲も収録されている。
1曲1曲が充実しているので、BGMというよりは、じっくり耳を澄ます音楽体験になる。
ある時は、彼女が独りピアノを弾く部屋に立ち、静かにそれを聴いているような気分になり、
ある時は、ぐっとピアノに近づいて華麗で迫力のある音の流れに身をひたす。
余談だが、
ジャケットが「のだめ」23巻カバーに似ているのは偶然か、ユーモアか。
CD本体はきれいな薄桃色。