毒をもって毒を制す、というひな形を警察対マフィアの構図にねじ込んだ作品。
言動だけ見てたらどっちがワルなのかわかりません(笑)
余計な説明的セリフを一切言わせず、淡々と捜査の過程を連続させていく。
NYの厳しい寒さの中で歯を食いしばりながら地味な張り込みを継続していくシーンは映画史に残る名シーン。
大袈裟な演出や音楽を排除してある種ドキュメンタリーのような撮影の仕方が面白い。
逆光や顔が撮れてないのもお構い無しで画面がボケたりしながら必死に役者の動きに追いつこうとした映像が逆に緊迫感を生んでいます。
当時のアメリカは経済が低迷し
ベトナムは泥沼化、警察は汚職まみれで最も嫌われていた存在でした。
そんな中映画業界もどん底であらゆる会社が倒産寸前でした。
これまでの予定調和ハッピーエンドアメリカ万歳映画を大衆は求めなくなっていました。
そこに登場したのが今作であり、ダーティハリーでした。
地味な捜査と派手な逮捕とその努力に見合わない罪状を描いた、緊迫感溢れる作品。
ハッピーエンドでは終わらない、善と悪がハッキリしない、そんなニューシネマの傑作。
余談ですが、ジーンハックマンが演じた暴力刑事のモデルになった人物は、本当にヤクザが警察バッジを持っているような人間でこの映画が製作された数年後にタガが外れきってしまいクビになっています。
すでに1と2のボックスセット盤ブルーレイ商品を買っているのでレビューでも書かせていただいているが、本ブルーレイは赤系のにじみがやはり気になる。それでも通常版DVDよりは劇場で見たときの色に近い(通常DVDは色が濃すぎる。この映画は劇場ではこんなに色は濃くなかった)。
やはりこのブルーレイ盤の色滲みはどうにも気になっていたが、原因が今頃になってわかった。
最近、初めて2枚組特別版の方の特典ディスクに入っている特典を今頃になって見たら、フリードキンがその原因を作っていたことがわかったのだ。
フリードキンはテレシネ技術者と一緒になって、実に変なことをやっている。
最初に色を全部抜いたモノクロの画像をつくり、そこに今度はカラー情報だけを取り出したものをわざわざ淡くしてかぶせる、などという奇特なことをやっておる。「パステル調を出したかった」などと盛んにのたまうているが、おいおい本作はパステル調じゃないぜ。
色を感じさせないリアルな映像と、パステル調というのはちょっとニュアンスが違うのじゃないか。
そんな人工的な加工をしたものだから、赤系などの色温度が高い色が滲んでしまっているわけだ。
何か、色滲みはフィルムにもともとあったものだ、なんてもっともらしいことを書いていたレビュアーもいたが、ちゃんと劇場で見たのかよ。
ニューマスターの北米盤は現段階では未購入だが、本作の撮影監督だったオーエン・ロイズマンがテレシネにちゃんと立ち会ったらしく、期待ができるものになっているはず。
日本版も是非、出してもらいたい、とFOXジャパンさんにリクエストをしておく。
一般にはあまり知られていない
フルート、
クラリネット、ピアノを中心とした室内楽。
フルートと
クラリネットというのは、なかなか音が溶け合わないものですが、パユは只者ではありません。金属製の
フルート(多分いつものブランネン)を使って木管
フルートのような響きを創りだし、
クラリネットの音色と見事に溶け合って室内楽の楽しさ、面白さを存分に教えてくれます。
曲目も、ショスタコーヴィチのワルツ2曲(楽しくてかわいい)、シュミットやエマニュエル(ちょっとラベル風のピアノ、
パリのエスプリを感じることができる佳品)からジョリベ(アンサンブルが難しいんです)まで、
フルートやパユのファンのみならず、幅広いクラシックファンの皆さんにお勧めしたい1枚です。