ノルウェーのエクスペリメンタルバンド、ウルヴァーの2013年作
カヴァーアルバムをはさんで、エレクトロなアートロック的であった2011年作に続くアルバムで、
今作ではオーケストラを大胆に導入し、静謐感を漂わせた異色作になっている。
ストリングスやピアノを含んだクラシカルな優雅さと、暗く沈み込むような闇を感じさせる、
チェンバー系のプログレのような作風で、美しくも緊迫感に包まれたサウンドが広がってゆく。
ピアノのつまびきに、もの悲しいヴァイオリンが響き、ゆるやかな旋律の流れの中に、
シアトリカルでオペラ的なドラマ性と美意識を描きながら、エレクトロなアレンジが加わってゆく。
ロック色はまったくもって希薄だが、まるでやわらかな漆黒にまとわりつかれるような心地がする傑作だ。
1stではフォーク風味のあるブラックメタル、2ndではピュアなフォークをやり、スタイルは違えどフォーキーな雰囲気を貫いてきたULVERが突如発表した、プリミティヴ・ブラック以外の何者でもない作品。
喧しく叩きまくるドラムに耳障りなギター、ギャーギャー喚きちらすボーカル。これはこれで迫力のあるブラックメタルに仕上がっている。
というか、プリミティヴ・ブラックとしてはかなり高いレベルの作品になっている。
ここまで異なるスタイルなのにクオリティの高い作品を作ってしまうとは、すごいバンドであることだ。