著者曰わく「この本は私蔵の
美術館のようなものだ」
持つだけではなく操縦出来なければ無意味なヨットの記憶。若くして作家・政治家となった著者が描いた様々な友人や、関わった各界の名士達との交遊録。
よく自慢話だと貶す方がいるが、これだけの経験が出来る著者が正直、羨ましい!
一癖も二癖もあるアクの強い友人とヨットや遊びに興じ、時にナイトクラブやキークラブなどの風俗を懐かしみつつも、共に金権政治打倒を盟約た青嵐会、また映画や出版界にまで話が及ぶが、そこに登場する連中の描写が堪らない。
著者の父代わりを自認する新聞社社長とか、今は著者の片腕として活躍する友人とか、本当に話題が多岐に及んで尽きず、読むたび毎に羨望と嫉妬が増幅してしまう。
『わが人生の時の』シリーズで読んだエピソードと重複する内容も散見するが、特にヨット絡みだと熱が上がる。
欲を言えば「小説としてではないが何かの形で、私の政治生活の中でいわばある年代記のように、個人ではなしに群像の記録として記し残しておきたい」青嵐会に関して、もう少し詳しく読みたかった。
石原さんが出合った人生の素晴らしい達人達の生き様を紹介するお薦めのエッセイ。ここに登場する人々のいかにも男らしい、まさに日本男子と評することのできる方たちと石原さんとの折々の交歓が独特の硬質で美しい文章で活写されている作品です。(因みに女性は一人も登場しません)石原さんは後書きでこの本はいわば私蔵の
美術館のようなものだと結んでおられますが、随分贅沢なめぐり合いに恵まれたのだなと羨ましく思います。今ではすっかり強面で鳴らしておられますが、このエッセイを読みますと石原さんはこれらの先達方に大変礼儀正しく対処されていることが伺われ、叱られそうですが湘南のお育ちの良いお坊ちゃまであったこともこれらの方々から石原さんが可愛がられた所以かなとも感じたものでした。
本書は「ゲーテ」の連載に加筆・修正を施したもので全十八章からなります。
著者があとがきで「この本はいわば私蔵の
美術館のようなものだ」と語るように、本書は著者が人生において関わってきた人物の豪胆・豪快なエピソードを綴っています。
解りやすく副題をつけるなら「石原慎太郎思い出話」でしょうか。
著者はおそらくそういった癖のある魅力的な人物を紹介することで現代の若者に発破をかけているのではないでしょうか。
「おまえらもっとでかいことやってみろよ」と。
政治的な話はほとんどなく、数々の人物との思い出話に終始していますが、本当に豪快なエピソードばかりです。
しかし万人にお勧めできる本ではないと思いました。