土地柄から言って黒人の弁護に勝ち目はないと思いながらも、
弁護士の原点に立ち戻り、また一人の父親として、若く、経験も浅い一人の白人
弁護士が立ち上がる。アメリカ南部の根強い人種差別意識の理不尽さが重くのしかかってくる。陪審員たちに対して、単に理屈だけで押しとうすのではなく、心情に訴えた弁護は、これを見る者の心にも深く訴えてくる。
見る者を最後まで引き付けて離さない、法廷ものの作品としてわすれられない逸品だ。
サンドラ・ブロックやマシュー・マコノヒーがでています。話はある黒人の女の子がレイプされ、殺されかけます。犯人は白人の男二人。その男たちを女の子の父親が銃殺します。事件が起きたのはアメリカ南部で根強く黒人に対する差別が残るエリアでした。その父親の罪を巡って起きる裁判にまつわる話です。
今時こんな差別はないと思いたいというようなシーンが何度もでてきます。黒人が、白人が、という数々の発言。そして裁判に関わる人たちを脅す人たち。裁判の行く末はどうなってしまうのか、はらはらします。本当の正義がなんなのかはわからないけれど、大事なことってなんだろうと心に波紋をなげかける映画でした。
書店の新刊書コーナーで John Grisham の 'Sycamore Row' が目にとまり、著者の処女作 'A Time to Kill' の続編とあったので
まずこちらから読むことにした。
本書は1989年に出版され、すでに多くの方たちがレビューを書かれているので、重複は避けてただ感想をひとこと。
60年代の公民権運動を経ながら、1980年代のアメリカ社会の様相はなんと矛盾に満ち諸問題が錯綜したものであるかが読みとれる。
10歳の娘を白人にレイプされ、犯人を射殺した黒人の父親をめぐる裁判を通して、当時のアメリカの裁判のしくみが詳細に描かれている。
大陪審と小陪審、
弁護士の闘い、判決が出されるまでの経過など、’Twelve Angry Men'(12人の怒れる男)を思い出し、また白人と黒人
の対峙については’To Kill a Mockingbird'(アラバマ物語)を連想した。
根強い人種差別観、KKK(Ku Klux Klan) の脅威、銃社会などのもとで、しかし人間の心が息づき、その結末に若干の疑問は残るものの、
ほっとするものがあった。
細かな部分では理解しがたかったり、説明不足を感じたりしたが、英文は平易で、引き込まれて読み進んでいける。
次に、続編とされる 'Sycamore Row' を読むのが楽しみです。
書いた小説が次々に映画化される。それが気に入って、以前、グリシャムの小説を夢中になって読み耽った時期があります。彼の一貫したスタイル(新米の敏腕
弁護士が、古参の大物検事を遣り込める内容)が好きだったのですが、今は少々飽きてしまって・・・・・。
まあそんな下らない前置きはさておき、『評決のとき』はグリシャムの本の中で一番の傑作ではないかと思います。性犯罪の実態、銃社会が起こす悲劇、死刑制度の賛否、相変わらず色濃い差別意識など、米社会が抱える諸問題を凝縮した著者入魂の一冊と言えます。その中で特に、弁護人・検事・判事入り乱れての法廷論争は見応えがあり、あたかも陪審員席で白熱した論告を聴いているような不思議な錯覚に陥りました。第一級リーガルサスペンスの期待は裏切りません。果たして、弁護人ジェイク・ブリガンスは、強姦された娘の報復殺人を犯した被告の勝利を法廷で勝ち取る事ができるのか?
上下巻合わせて長いですが、まだ読んでないという方がいたら是非一度読んでみてください。また、グリシャムは映画でいいよ。という方、勿体無いよ。とは言いませんが、小説には別の発見があるかもしれません。事実、陪審員の前でジェイクが被告人カール・リーの無実を訴える様は、かつて
弁護士として活躍した著者自身に重なります。それは小説を読んで知りました。
最後に、その迫真の演技がジェイクに奇跡をもたらしたと付け加えて起きます。映画ではほんの数十分程度のシーンですが、長らく読んで来た疲労感と感動が同時に訪れた感じがしたと記憶しています。