乱歩作品は今日では多数の文庫(光文社、創元、角川、筑摩、
新潮)で読めるようになりました。集成としては光文社、当時の挿絵入りでは創元が優れていますが、光文社版は分厚くて寝転がって読むにもやや嵩張りますし、創元版は挿絵でイメージが定まってしまうという不満があります。春陽堂版は1969年に出た初版をベースにしており、年代問わず面白いところをすっと出してくれています。あの当時は春陽堂さんの文庫がなければ
講談社の箱入り全集しかございませんでした。何となく乱歩の時代にあったようなやや黄ばんだ紙の上の文字を読んでおりますとだんだんと乱歩世界に入っていくことができるように思います。他の文庫もすべて持っておりますが、この春陽堂さんのものが一番乱歩を読むのに相応しいかと思うのであります。私はこの文庫で「陰獣」「パノラマ島奇談」を読んで以来ずっと乱歩の愛読者となってしまいました。
物語にさほど意外性があるわけではないが我が国の推理小説の元祖と言われるだけあってその想像力の豊かさは天才的ですね。
宮部
みゆき氏もまずこのあたりをしっかり読み込んでいたことがよくわかりました。
清純派女優叶和貴子の若かりし頃のヌードが拝める。ただそれだけが売りの作品。肝心のパノラマ島は絵に描いたセットで笑わせる。乱歩作品を映像化する場合は十分に予算を取ってもらいたいものだ。