私は57才、父は88歳で第二次世界大戦のときに満州に出征し終戦前後にソ連との戦いで銃撃戦をしたらしい、戦後しばらくはシベリアに抑留されたと聞いている。日本軍と開拓団の中国満州での悲しい歴史とまた違った南方戦線での飢えとマラリアの中での過酷な戦いを読みながら戦争のおろかさを悲しく感じた。ニューギニア、ポートモレスビー、ラバウル、ソロモン海、ガダルカナル島などの激戦地区の地名などが昔・・・昭和30年台、私が10歳頃に読んだ貸し本屋の戦記物の漫画が懐かしく思い出されました。戦時中の人間の行為は軍隊の規律に縛られた行動と自分自身の中にある信念、郷土家族への想いという美しい理由とその反面、自己利益だけの醜い行動等の理由が入り混じった中での行動だったのでしょう。
1970年生まれの作者が経験も無い世界のことを、いつどんなときに書こうと思ったのかをしりたいと思う。
南西諸島の孤島の空自の通信基地。僻地のため司令自ら地域住民との交流を重視し良好な関係を保っていた。そこでおこった小銃消失事件。
調査部のコンビが送り込まれる。事件は外敵にさらされても法規制により何もできないことに不満を感じた若手が問題提議のためにあえて起こしたものだが、自衛隊自体のアイデンティティの矛盾がその根源にある。サイドストーリーとして在日韓国人と旧軍、自衛隊の関係も語られる。エンタメとして一定レベルの上に、重いテーマに挑んだ意欲作。Bの上。
航空自衛隊レーダー基地の隊長室の電話機に
盗聴器がしかけられていたため、防衛部
調査班から幹部が派遣されてくることになった。
犯人は?そしてその目的は?
防衛部
調査班の朝香二尉のサポートをすることになった、監視隊の野上三曹の語りで描かれています。
野上三曹は22歳で入隊4年目。
レーダー基地内の習慣や仕事についてはあたりまえのこととしてさりげなく説明されますが、
盗聴器の事件の捜査をする朝香二尉の行動の不思議な点などについては、読むこちら側と同じに「変なことをする」という視点から見ているので
とても読みやすく計算された筋立てになっています。
識別不明機(アンノウン)を発見した際のオペレーションルームの緊張感が見事に描写されていて興味深いものになっています。
謎を解き明かしていく過程に無理がまったくなく、また犯人の動機やその後の処理なども納得がいく筋立てになっていてとても面白かったです。
なにより、野上三曹の成長が清清しいので読後感がよい面白い本でした。