藤本敦夫は、橋本一子に絶えず寄り添い、彼女の独特な音世界の構築の貢献してきた。今回は、カラードミュージック以来、久々に脇役から、主役に躍り出た。
藤本は、ギター、ベース、ドラムスとすべての楽器をこなすが、それぞれ超一流とは言えず、器用貧乏という印象を持っていた。83年末の山下洋輔トリオ解散コンサートでは、勇猛果敢にも、渡辺香津美にギターバトルを挑み、音楽で完敗・パフォーマンスで一矢報いるという華麗な戦歴も持っている。久々のボーカルは、味があるが、まあなんとかこなすという程度で、最初は聴き通すのがやや辛かった。ここでも1・5流か?と思いきや。
歌詞・アレンジが素晴らしい。絶妙の間、不思議な歌詞、多重録音の合唱、とそのポップでありながらシュールな音世界に夢中になってしまった。
『ぶっとんだ』は空回りする情念をシニカルに唄う。「笑い飛ばそうとしたら、自分が飛んだ。海の向こうに月が見えた」。絶品。
楽屋落ち的な『小川美潮』、「大好き。みしお〜。みしお〜。永遠に」共感。
『どこにもないランド』はシンセ・テクノわらべ歌。「そんなことはいいんだ。どうでもいいことさ。大人になれば肩すかしさ。山芋・里芋・おっかけ忍者」小川美潮の唄。なんだかなつかしい。
『ツールド
フランス』は例の橋本一子の舌足らず・
フランス語が聴ける。これは、Arc’d-Xの世界。「あれっ!あれ!Allez! Alez!」
最初はおっかなびっくりだが、噛めば噛むほどおいしくなり、最後には病みつきになるという、異質な食文化に対する初体験と似ているなあ。