巨匠・根岸吉太郎監督による1993年の作品。原作は伊集院静氏の同名小説。1993年上映。根岸監督が得意とする「だらしない中年男」として小林薫が主演。モデル出身の女優・及川麻衣、
竹中直人、戸川純が共演しています。
ギャンブル、女遊びに明け暮れ家庭をまったく顧みない「だらしない中年男」(小林)が部下である若い女性(及川)と交際を始めますが、やがて彼女が白血病という不治の病にかかってしまい…。すべての遊びをやめて中年男は献身的な看病を続けますが、つい酒を飲んだ夜にホテトル嬢を呼ぶことに。しかし、ホテトル嬢を呼んだにもかかわらず死の淵を彷徨う彼女のことが気がかりで、深夜、中年男は病室を訪ねます。努めて元気に、陽気に振る舞う彼女を見て、中年男はたまらず号泣してしまいます。
言うまでも、原作者の伊集院静さんの亡き妻、故・
夏目雅子さんも白血病で若くして亡くなりました。夏目さんとの思い出をつづった原作だけに、リアルで慟哭の心情が全編に流れています。60分に満たない短編映画ですが、極力無駄を排した描写によって妻を亡くした深い悲しみを余計に切実と表現しています。あえてバカを演じて場を明るくしようとする友人、
竹中直人の演技も光っています。
伊集院静、
風間杜夫の2氏の強さはプロに匹敵すると書いても何ら差し支えないでしょう。このDVDはたった半荘1回ですが、その強さの一部を十分に知ることができると思います。
ただ、2人に撮影しているという自覚がなさすぎるのが非常に残念なので、星1つ減点させていただきます。
ツモった牌をすぐ(視聴者に見せることなく)ツモ切りする、危険牌をツモったので(視聴者に見せることなく)すぐ裏返してしまうのは論外ですが、2牌を持って右端でカチャカチャするのは普段の対局としてもマナーが悪いと思います。その点、小島氏と前原氏のプロ2人はマナーが良かったですね。当たり前と言えば当たり前ですが。
瀬戸内海の離島・葉名島の小学校に、臨時教員が北海道から赴任してきた。その青年教師は吉岡誠吾(
坂口憲二)、剣道の試合の事故で発語を失い口がきけなかった。子どもたちは、吉岡を図体がデカく口をきかん先生=機関車先生と呼んだ。やがて、よそ者で口がきけないというハンディーキャップを背負いながらも、機関車先生の温厚で真摯な姿勢は子どもたちや島民に浸透していった。しかし、機関車先生は葉名島を離れることに……。
障害を負った青年教師が子どもたちと島民のふれあいによって失意の淵から再起する。人をつくるのが人であるなら、教師をもまた人である以上、人すなわち、同僚の教師、生徒と親、島民よってつくられる。この点において、本作は教育と教師の復権を示唆する傑作である。子役の7人は新鮮で微笑ましい。また、堺正章、伊武雅刀、倍賞美津子、
大塚寧々がそれぞれの登場人物の奥行きのある人間味を表現している。台詞の無い最難関の役どころを
坂口憲二が好演し、表情や動作・しぐさで機関車先生の内面を裸出している。本編ラストにおいて、子どもたちと機関車先生が交わすたった一語の言葉は心の深奥にふれずにいられない。