人に勧めて勢い余ってあげてしまうことが多く、また見たくなった時に手元にないと、比較的安価なため、つい購入してしまいます。もう幾度見たかさえ判然としなくて、台詞や展開やオチまで頭に入っているのに、たとえばアニーの実家からの帰り、アニーの弟が運転する車の中での固まったウディ・アレンの表情なんかにやはり覚えず笑ってしまいます。それぞれのエピソードが時系列に並べられていなかったり、過去を話題にアニーとアルビーが話をしている場面を見せるのに、その過去のある時点に現在の二人がそのまま登場するといった描き方をしたり、他の作品にも見られるアレンの衒学的な姿勢であったりといったところから、ともすれば難解と取られがちなアレンの映画ですが、まあ分からないところはあまり深く考え込まないで、予断にとらわれず流れに身を任せて楽しんでも、それはそれで結構楽しめるのではないか、というのを最もよく教えてくれるのが本作であるような気がします(まあ、逆に「何度も見て、深く考えても楽しめるのが本作」という言い方もできると思いますが)。
アニー・ロスの59年作は、
ジャケットの颯爽と歌い上げる感じそのままの洒脱で垢抜けた作品だ。ズート・シムズやジム・ホールと客演も豪華で、特にズートのサックスが効果的に響いている。またピアノのラス・フリーマンもとても軽い
タッチで良い伴奏をしている。
さて主役のアニー・ロスのボーカルだが、感情を込めすぎないところが、今聴いても現代的で素晴らしく、スローな曲もアップテンポな曲もとにかくクールで嫌味がない。オールディーズ的な
ジャズ・ボーカルも多かった時代だが、本作は演奏者全員の
セッションが絶妙に絡み合い、まさしく
ジャズといったフリーなフィーリングに満ち満ちている。