この脚本は、とても完成度の高いものだと思います。その後、橋部さんは数々のドラマを書かれていますが、今作を超えるものは未だなく、また、今作の雰囲気からなかなか抜け出せないように感じられます。
橋部さんが伝えたかったこと。それは、「死ぬことは、終わることではない」ということだそうです。
このドラマには、今を生きる私たちの心のど真ん中に深く突き刺さる言葉が、特に小日向さん演じる主治医によって、ちりばめられています。
そして、中村先生を演じられるのは、草なぎくんをおいて他にいなかったとも思えるのです。
この役、キムタクにできるでしょうか?それはミスキャストになるでしょう。
草なぎ剛は、決して演技が上手ではない。滑舌は悪いし、器用じゃない。
だけど、魂を感じる。おとなしい男が、死を宣告されて、この世の不公平に思いを駆られ、取り乱すシーン、「僕は間違ってません!」と、上司に言い放つシーン。
すごい迫力でした。
しかし、私が現実的に感じてほんとに涙したシーンは、ベットの上で、母親に「ありがとう、母さん」と言い、ニコニコしてたお母さんの笑顔が消え、泣き顔を見せまいと顔を後ろに向けながら、息子の足首をさするシーンです。
あのお母さん役、すばらしいです。
教頭先生もいいし、
大杉漣もすばらしいし、ほんとに悪い人なんて、一人もいなかった気がします。
ここで女性目線なのですが、毎回
矢田亜希子のファッションがかわいくて、心底、あこがれました。首もとのなるべく詰まった、清純な服装で、高感度、大!よく食べる役でしたが、スタイルがいいので、ほんと見ほれました。
生徒役だった人たちも、多くがその後ちゃんと羽ばたいていきましたね。
でもやっぱり、このドラマは草なぎくんしか中村先生を演じ切れなかったと思います。
器用さはなくても、彼には魂の演技ができます。そして、清潔感があります。
私は、不器用な草なぎ剛が、だいすきです。
もうひとつ、「彼は変わったから愛された。変わらなかったら愛されなかった。それでは今までの彼は報われないのではないか」とのレビューを書かれている方がいらして、私は「なるほど!いえてる!」と思いました。
だけど今はこう思うのです。死を宣告され、彼の行動と言うか、生き方は激変しました。
でも、本質はきっと変わっていないのでしょう。
それまで彼は、平穏無事に暮らすことを第一に考えてきた、だから自分の気持ちより周りに同調する、クセが染み付いていたのだと。
それが病気のことを知り、残りの人生を精一杯生きるために、自ら行動するようになった。
彼には時間がなかったから、少々あせりもあっただろうし、それははたから見ていて、「変わった!」と受け取られ、印象に残る。
つまり、今までわかりづらかった彼の本質が、行動として現れるようになり、みどりの目に留まった。そしてギャップが大きいほど、それが良い方向に向かっていればなおの事、魅かれていくものではないでしょうか。
通勤電車の中で読みました。涙が溢れそうになって、こらえるのがたいへんでした。ドラマも毎週欠かさず見ていましたが、活字となったセリフは一言一言が胸に響いてくる気がします。
ドラマを見た人にも見ていない人にもオススメです。