原作を読んでとても感動したので是非映像化されたものを観てみたいと思って観ました。原作のシーンを再現するために制作者がものすごく凝って作られたのだなとかなり感心しました。ただ個人的な印象ですが、子役の優希が原作のイメージとかなり違うのに違和感を感じましたし(演技力は素晴らしかった)、大人時代のモール役は渡部篤郎はやや小柄でそれも少し違和感がありました(あくまでも個人的感想)。
「歓喜の仔」と題されているので「永遠の仔」につながると思われそうだが、読後感は「包帯クラブ」のトーンに近い。ミステリーの趣を持つことから、「悼む人」で天童荒太はどこへ行こうとしているのか戸惑ったが、ファンとしてはお帰りなさいという感じだ。ただし、その設定はありえないだろうと思うけれど。
誠、正二、香、彼ら三人の兄弟はとても過酷な環境に生きている。生きざるを得ない。選ぶことはできなかった。子どもだからそれが普通だと思って読み進めていくと、実は彼らは自らの道を切り拓くために、決断をし選び取ってきたと思わざるを得なくなる。
家族を養うために日夜働き詰めで、犯罪にも手を染める兄の誠、家族崩壊の後色彩を失った世界に生きる弟の正二、
幽霊が見えると兄たちを困らせる妹の香。兄は戦火にまみれた土地に生きる友人を空想し、弟は不法滞在の子を友とし、妹は他国籍で問題を抱えた子たちを友とする。そして彼らの抱えている問題が動き出し、過酷な運命には抗えないと思われたとき、すべての事柄が伏線となり謎が解けるように微かな明るさを残しつつラストを迎える。
暗く先行きのわからない現代に、おのれの運命を受け入れなおかつ切り開こうとする、その強さ、若さ。それと対照的に彼ら兄妹の父母や周りの大人の生き方が流されているように見える。選んできたか、君たちは選んできたのか、これから選んでいくのか、そういうメッセージとして受け取れる。