浮浪雲 [DVD]
主題歌、吉田日出子の「いとしのファニー」「夢色ララバイ」につられて購入しました。
1990年ごろの深夜テレビで放映されたものを見たのが最初でありますが、当時は女性と初めて交際を始めた頃でありまして、その頃の強烈な想い出が、主題歌から蘇ります。
深夜、悶々と「いとしのファニー」をラジカセで聞いていた、さえない独身男は、浮浪雲のように飄々と生きる姿に憧れたものであります。
特に女性関係においては、浮浪雲の旦那が理想でしたね〜
わたくしのばやい、結局、その女性と結婚して現在に至るわけでありますが・・(汗)
作品自体は、無難におさまっています。
原作はビッグコミックオリジナルの、長期連載作品ですから、読まれた方も多いでしょうし、その作品を読んでいた頃のそれぞれの記憶がオーバーラップする方も結構おられるのでは?
追憶の引き金として、所有する価値のある作品でありました。
本作品で、青春時代の感傷に浸りながら、渡哲也版の「浮浪雲」が発売される今年夏まで待ちたいと思います。
個人的感傷に終始したレビューで失礼しました(ぺこぺこ)
邂逅の森
秋田のマタギ富治の大正から昭和初期にかけての半生を描いた作品。抗い難い力によって人生の重荷を背負わさされた人々が、それでも懸命に生きていく姿は感動的です。テンポの良いストーリー展開にぐいぐい引き込まれる感じ。クライマックスの富治とクマの死闘は物凄い迫力です。
DISTANCE(ディスタンス) [DVD]
現実と非現実の間をふわふわしているような印象を覚える作品でした。見る人によって後味が全然違うと思いますが、考えたい人、ドキュメンタリーの様な空気感が好きな人にはおすすめです。
マタギ 矛盾なき労働と食文化
「マタギ」っていうと、「菅笠被った孤高の老人と巨大熊の死闘」的な、
メルヴィルの白鯨みたいな絵を連想してしまうが、
ここにいるのは、「フツーに今を生きてる、等身大のマタギ」。
大層らしい講釈垂れる人は一人もなく、読んでいて気持ちがいい。
それでいて、自然に対する彼らの畏敬の念、愛がひしひしと伝わってくるのは、
マタギたちと、阿仁の自然を温かく記録する写真のお陰のようだ。
山にいるマタギたちの写真が、どれも素晴らしい。
山に生きる人間が、自然の中でその気配をまったく消せることが、
それを伝えることが、写真にできていることが、
素直に理解でき、また感動できる。
マタギは消えていく運命にあるのかもしれないが、
その生き方が我々に教えてくれるものは、
決してなくしたくない、そう思わせてくれる良書だ。
邂逅の森 (文春文庫)
最近の芥川、直木賞受賞作、全部読んでいるわけではないけど、
ちょっと違うなと感じていましたが、この作品は良かった。
ひさびさに傑作の予感が。
読んだことのない作家の長編はとっつきにくいものだけど、
この作品はそうではなかった。東北のマタギ(猟師)の世界を
描いて冒頭からぐいぐいと読者をひきつける。
マタギというハードな男の世界と、主人公富治の恋愛、波乱万丈の
人生が綾織のように展開される。方言と山のマタギ用語が飛び交う
大正初期の東北の貧しい村が舞台でありながら古臭さを感じさせない
のは語り口(文体)が新鮮なせいか。
文学的に深い作品が読みたい、マタギという未知の世界への興味、
エンターテインメントとしての筋のおもしろさ、人生とは、生きる意味とは、
と 欲張りな読者の欲求をすべて満たしてくれる作品。
富治が魅力的な男として描かれているのだが、最終章、
山のヌシとの一対一の対決はハードボイルドそのもの。しびれます。