僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫)
らもさんが、亡くなったことを今日知って、ぜひ、らもさんの作品の中で
一番好きなこの作品をレビューを追悼に書きたかった。
私の大好きで思い出の詰まった神戸の町で、
日本で有数の進学校で「もんもんとした思い」を抱えながら、フーテンでバカやって過ごした青春の話。脚色されていなくって、そのままで、それでいてあったかい。無駄な時間を過ごした?ううん、この時間があるから、あのらもさんがいるのだなあ。。。。と何度も読み返した本。正直で、不器用で、あったかいらもさんそのものです。
東遊園地の噴水、東亜食堂の中華粥、八島食堂の瓶ビール。。。らもさんがいないことを神戸の町はきっと恋しがるよ。そしてそして、あなたの新しい作品とあなたの案外力強い歌声にもう会えないと思うことはとてもとてもファンとしてさびしいです。なんとなくあなたが不死身だと錯覚してました。
この作品は、若さをもてあまし、世間を呪い、自分が好きになれない日々を送っている少年・少女たちにもこれからも読まれ続けて欲しい。。。永遠の名作だと思います。
心が雨漏りする日には (青春文庫)
中島らもの40~50代の人生をそのまま執筆
故に、躁鬱病、アルコール中毒、入院と他の本と重複するテーマに見える
しかし、この本は中嶋らもの現在こういう状態になってしまった
分岐点の時期や原因を把握して書いてある
独りの素の人間、50代の男の素をさらけ出している
ここには、笑いもドラマもない
中島らもの傍に居た人達は、このらもさんを支えてきた
中島らもの他の本とは異色で地味です
でも、戻せない時間をらもさんが懸命に手繰るようなこの本
是非一度読んでもらいたい
こどもの一生 [DVD]
本作を劇場で観た。 もう10年位になるだろうか。確か今はなき近鉄劇場だったと記憶している。
故・中島らも氏の戯曲を、今や売れっ子になった演出家G2(当時は本作にも出演している升毅が主宰する"MOTHER"の作・演出がメインだったと記憶している)が見事に形にしてみせた。
本作に出演している役者陣は今や全国区のTV等にもひっぱりだこだが、彼らのスタイルはこの時点で既に完成している。
記憶が正しければ、本作にはうら若き日の小沢真珠も出演している。
とにかく面白く、そして怖い。
当時演劇に足を踏み込み始めたばかりの私には、全てが新鮮に思えた物だ。
映像や音楽を舞台上で巧みに織り込みつつ、ダイレクトに伝わる役者の時に軽妙で、時に戦慄すら覚える演技に私を含め観客はその世界にやられっぱなしだった。
現在ではらも氏自身による本作のノベライズを手にする事も出来るが、それはあくまでこの舞台を観た後でのサブテキスト。
とにかく味わって頂きたい。
なんて事書いてると、後ろから人の声が・・・・
「よろしいですか〜!?」
「山田のおじさん」が立っていた。
血の滴るチェーンソーを手にして。
・・・・・と言う事が舞台上で繰り広げられるのだが、これ観た後では暫く夜にパソコンの前に座る気を無くすかも知れないのでお気を付けて。
ガダラの豚 2 (集英社文庫)
前編は”魔術はない”という一貫した観点で展開されていた。新興宗教団体から妻を助けだした主人公一家は本物の魔術探しというテレビ番組の要請で番組クルーと共にアフリカに渡る。首都ケニアは予想以上の都会だが、本物の呪術師を探して僻地へと旅を進めると、もうそこは呪術が文化・物語として社会に埋めこまれた土着の世界。このあたりの呪術に興味のある読者は文化人類学の著作を探して読まれることをお奨めする。日本では小松和彦先生の著作がエキサイティングだ。毒薬、ドラッグの記述はらもさんの得意分野で、読者は一転、”魔術はある”という世界にどっぷりと浸かる事になる。この旅行での主人公一家のプライベートな目的は、かつて、この地のフィールドワーク中の気球事故で行方不明のままの長女を探す事でもあった。そして本物の呪術師バキリを探した時、その長女はバキリのキジ-ツという呪術のしもべとなっていた。彼女を奪回、呪術師の執拗な追跡を逃れ、無事、アフリカから日本へと戻るのだが、このままでは終わらない。前編から中編の呪術への視点の180度の転換に読者はジェットコースターに乗せられたように手に汗。