アイオミ
ヘヴィなリフから繰り出されるグルーブ。現在のヘヴィロックは全てこの人のギターから始まったと言っても過言ではないトニー・アイオミのソロ。
既に活きた伝統となりつつあるそのスタイル、そして彼がつくりだせばブラックサバスができあがってしまうと思えてしまうほどの個性。
しかし、本作ではいい意味で裏切られた。本作ではブラックサバスとは全く異なるトニー・アイオミ「独特」の世界を、自らのスタイルを裏切ることなく堂々と最新のトレンドもとりいれて表現している。
ゲストヴォーカリストに様々なタレントを揃えているが、彼ら(彼女ら)の個性も活き活きとさせながら、決してこの多くのタレントにあわせるのではなく、反対に彼らが「アイオミ」の世界にトラップされている。
ブラック
ザ・フューチャー・エンブレイス
正直個人的にこのアルバムはあまり好きになれなかった。
霧の深い迷いの森みたいな世界観は嫌いじゃないし良い曲もあるけれど本当にふっきれていたのか?
ジャケットはそういう意思表示だったのかもしれない。だけどやはり音楽のように森の中をぼやきながらさまよっているような中途半端な感じがする。歌メロもキャッチーなわりにビリー本来の明快さに乏しい。そして彼は出口ではなく入口の方に戻っていってしまった。
これが売れていたらスマパンは今頃復活していなかったのかな。
トゥデイ
セカンドアルバム、Siamese Dream からの第二段シングル。リスペクトするしかない!って感じのイントロから始まる切ない曲は、コンサートでも大合唱が起こる名曲。日本盤の CD シングルは、稀少な同 7 インチシングルの B 面にのみ収録されている Apathy's Last Kiss も収録されていてとってもお得!
シー・マイ・フレンズ
私は、前作『キンクス・コーラル・コレクション』のレヴューで、次のように書いた。
「キンクス」の名を使ったアルバムを作ったことがレイの再結成の気持ちが高まってきたことの表れなのか、それともそこにソロ作も入れたことが「自分こそがキンクスだ」もしくは「自分ひとりでもキンクスの音楽をやっていける」という気持ちの表れなのか、いろいろと憶測してしまう。次の作品が気になるアルバムでもある。
そして、実際にリリースされた「次」のアルバムが今作だ。オリジナルのソロ新作かキンクス再結成実現かを期待していたのに、またもやセルフ・カヴァー集とは、少々肩透かしを食った気分にもなる。ただし、前作が終始一貫して合唱団とのコラボでリード・ヴォーカルはレイ自身だったのに対し、今作は各曲でロック系のさまざまなミュージシャンと共演している。前作と対になるセルフ・カヴァー集ととるのがよいのかもしれない。重複する曲を聴き比べるのも興味深い。とはいえ、ハードなロックでゴリゴリ押しているのかと予想していたら、思っていたほどではなかった。
今作のブックレットには、それぞれの作品に関するオリジナル発表当時の思い出と今回の録音をめぐるエピソードがレイ自身によって語られていて、それも興味深い。(日本版には和訳も付いている。)それを読み、それぞれの曲での共演を聴くと、レイの作ったキンクスの曲がいかに幅広く影響を及ぼしたかがよくわかる。
総じて曲のアレンジも良い。この録音の後この世を去ったアレックス・チルトンの「エンド・オヴ・ザ・デイ」などは、アレンジも歌もとてもかっこよい。ただ、たとえば「セルロイドの英雄」の前作と今作のヴァージョンを聴き比べると特に思うのだが、やはりレイの歌はどんなアレンジにせよレイが歌うのが基本的には一番しっくりくる気もする。今作はジョン・ボン・ジョヴィ&リッチー・サンボラとの共演だが、サンボラのギターはよいものの、歌の方はレイがリード・ヴォーカルを受け持つパートになって初めてこの曲に漂うノスタルジックな美しさが感じられるように思う。メタリカと共演した「ユー・リアリー・ガット・ミー」のようなハードなロック系の曲やパロマ・フェイスと共演した「ローラ」のような一癖ある奇妙な歌も同様で、決して今作のアレンジが悪いというわけではないのだが、やはりレイが歌っているほうがその曲の持つ味を存分に味わえる気がする。
それにしても、最近ブライアン・ウィルソンやピーター・ゲイブリエルやスティングといったヴェテラン系のミュージシャンたちが他人の曲のカヴァーや過去の曲のセルフ・カヴァーのアルバムを出すことが続いているのが少々哀しい。優れたソングライターの新譜はやはりオリジナル新作を期待してしまう。このアルバムも、全体としては決して悪くないのだが、その渇きを癒してくれるものではない。次こそ(ソロであれキンクス再結成であれ)素晴らしいオリジナル新作を期待したい。
全体としては星4つと5つの間ぐらいだが、レイならきっとオリジナル新作で星5つのアルバムを作れるに違いないとの期待も込めて、今作は星4つにとどめておく。
なお、日本盤はSHM−CDのうえ、マンド・ディアオとの「ヴィクトリア」およびアルノとの「モーメンツ」を加えた全16曲。どうせ買うなら日本盤の方がお薦め。
アドア
メロンコリー・アドア・マシーナを同時に購入した。
今のところ、3作品の中で聞き込んでいるアルバムはこれになる。
静かな曲が多いアルバムで、聞き終えた印象は
ビリーの歌声が心に染みる、だろうか。
ジミーがいない・スマパン初の打込み系・日本だけでなんでか売れた
で有名なアルバムらしいが、ava adoreやらBATMANのPVで
スマパンが好きになった人間からすると、このアルバムから受け取る繊細さは
彼らのダークでミステリアスな雰囲気に、非常に似合っていると思うのだけれども。
打込みのデコラティブなメロディに乗る物悲しい歌声や
単楽器のアコースティックな曲などを聴いていると
アルバムとしての完成度は高い気はする。
このアルバムのタイトルがメロンコリーなら、よかったのかもしれない。