切腹 [DVD]
私はこの映画を数年前アメリカで観たが、まったく圧倒されてしまった。時代状況を反映した唯物論的「切腹」の解釈であり、仲代達也、三国連太郎をはじめとする、往年の名優が繰り広げる演技も、今となっては少々舞台がかって見えはするものの、その迫真性は比類がない。今日これに匹敵する映画を製作するのは困難ではないだろうか。戦後日本映画の最高傑作と呼ぶにやぶさかではない。
遺し書き
シアター・コクーンで、仲代のファルスタッフで、無名塾が公演した”ウインザーの陽気な女房達(シェクスピア)”を楽しんだ日、ロビーで買ったのが、この本。
私にとっては、仲代の舞台鑑賞は、そう多くはないが、やはり、小林正樹や黒沢明の映画で、そして、NHKテレビで観た、映像俳優としての仲代達矢の印象の方が強烈であるが、本当の仲代の役者としての本領は、妻宮崎恭子と生きる証として築き上げた無名塾との舞台で発揮されるのであろう。この本を読んで、強烈に、そう思った。
この本は、”結核というハンディを背負っている、学歴もなく、実績もなく、役者としての才能も全く未知数の”売れない役者に、恋をし人生を捧げた最愛の妻への鎮魂歌でもあるが、二人三脚で歩いた二人の波瀾万丈の人生と激しい芸術への情熱が胸を打つ。NHKの「心の旅」で、英国最南東端のランズエンドの海に突出したミナック・シアターで仲代にシェクスピアの一くさりを演じさせていた元気な頃の宮崎恭子を思い出しながら読んだ。
この本には、宮崎恭子との生活以外にも、仲代自身の生い立ち、思い出の記もあり、貧しかった幼き頃からの心象風景も含めて語られていて、人間仲代達矢の実像が浮かび上がってくる。シェクスピア劇等のヨーロッパ劇も、新世界のアメリカ劇も、そして、現代劇も時代劇も、どんなドラマを演じさせても格調の高い舞台を作り上げてゆく希有な大型俳優の姿が清々しい。
<東映オールスターキャンペーン>二百三高地 [DVD]
歴史的な真実からすると二百三高地陥落前、既にロシア旅順艦隊は日本帝国海軍との黄海海戦でほとんどが戦闘不能状態になっており、ロシア艦隊の船員は陸上要員へまわされ、武器などは外され陸戦へと向けて陸へ移動していました。その情報を日本の海軍も陸軍も知ることはなく、旅順艦隊は戦闘可能と誤解して、二百三高地を観測地点としての陸からの砲撃によって敵艦隊壊滅…を狙ったのですが、終戦後の日本軍の調査では陸からの砲撃によって沈んだロシア艦船は1隻もなく、ロシア軍によって戦闘不能の船はキングス弁を抜かれて自沈されていたことが分かりました。つまり二百三高地の占領はその後の戦局に何ら影響を与えなかったことが真実です。
そんなつまらないことを言ってては楽しめません!
本当がどうとか史実とは違うとか…小さいことは置いておいて(まあ小さくないかもしれませんが…)、明治の日本男子が国のために命をかけて戦ったということは真実です!
また、本作は映画としては素晴らしいと思います。
仲代達也、丹波哲郎、森重久弥、三船敏郎など一流俳優が続々登場し、あおい輝彦と夏目雅子を柱に人間ドラマが展開していきます。
国の為に戦うのは何か?明治に日本が体験した戦いを追体験できるような映画です。
脚本も良くできており、本作での あおい輝彦演じる教師は、スピルバーグ監督の”プライベートライアン”のヒントになっているのでは?とも思ってしまいます。
好きな映画なので廉価版で発売したのは嬉しいところですが、デジタルリマスターのBlu-ray版で発売して欲しかったです。
ファンは既にDVDは持っているでしょうから、新鮮さに欠けました。
野口久光シネマ・グラフィックス
『開運!なんでも鑑定団』で紹介されたお宝が掲載されていました。
知らない人が多いでしょうね”野口久光”という人。
お芝居やジャズファンの方には評論おなじみみたいですが、
こんなにたくさんのポスターを描いていらしたとは・・・、
という人がほとんどです。(自分の周りの人々の反応)
横尾さんの文章にあるように、”野口久光”という人は
もっと評価されてもいいのではないかしら。
この本は、豪華な寄稿者の原稿も読み応えがあって、
何より野口久光の芸術作品は、幅広いアートの世界が
一望出来て、映画ファンだけでなく、
アートに興味のある人には絶対薦めたくなる1冊。
図版もオールカラーですし、持ちやすい大きさで
この値段はお買い得だと思います。
太宰治作品集
値段で購入を躊躇っている皆さん、その気持ち分かります。
私もさんざん悩んだ挙句「1CLICK」をクリックしたときは、
「やっちゃったかなー」と思いましたもの。
でも、聴いて納得。これは値段以上の価値がありますよ。
いなかっぺいによる津軽なまりの朗読も聴きごたえたっぷり。
「畜犬談」「きりぎりす」「皮膚と心」「葉桜と魔笛」などは、
小品だからと安易に選ばれたのだろうと思ってあまり期待せずに
聴きましたが、なかなかどうして。まったく聴かせます。
「畜犬談」なんかはそのまま落語としても通用するのでは?
岸田今日子による「ヴィヨンの妻」、
奈良岡朋子の「斜陽」全編朗読は、まさに贅沢なひと時。
名優たちが自分のためだけに朗読してくれる、
特別な時間を満喫することができました。