空の食欲魔人 (白泉社文庫)
孤高の叙情少女漫画家(?)川原泉画伯のデビュー作。
独自の世界を、意外に鋭い視線で、それでもほのぼのとしたタッチで
描く彼女は天才です。
惜しむらくは遅筆と寡作なのがタマにキズですが、体調をみながら、
できるだけ長く作品を提供しつづけてもらいたいと思います。
井上ひさしとの類似点は、ほのぼのタッチの作風の中に、くどくどと
能書きがたまーに長く挿入されるところ・・・かな?
ところで、本作品は、彼女のデビュー当初の短編集で、売れないイラスト
レーターのみすずさんが幼馴染のパイロットとなんの気なしに結婚して
しまい、その後に愛情に目覚める・・・という日常的な情景(?)を
軽妙なタッチで描いています。
心にあたたかさを必ず残す傑作そろいです。
ご家族で是非お楽しみください!?
バビロンまで何マイル? (白泉社文庫)
チェーザレボルジアの栄光と最期。
この作品をきっかけに塩野七生作品を読まれた方もいらっしゃるかもしれません。
恐竜がいなくなった訳も笑えました。
いまはもう望めませんがもっと色んな時代にワープしたユーリたちを見たかった。
中国の壷 (白泉社文庫)
はずかしながら、泣きました。川原作品は初期のころから、大半読んでいるのですが、うるるときたのは、これが最初。いつものように、うへらうへら笑えるところもあって、ほんのり切ないところもあって、でもいつになく、ぐぐんと胸にきたのは、なんなんでしょう。あの素直にまっすぐ疑いもせぬ目で自分を見上げてくる安曇の顔をながめている飛竜の運命を受容した姿。運命なのだと・・・。
笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫)
超お嬢様学園の中で、周りに合わせ日々猫をかぶって生きる三人の少女。
彼女たちの友情を描いた作品です(映画にもなりましたが、あっちは×だと思います)
主人公の三人はそれぞれとても個性的(僕は柚子が特に好き)。一緒にお昼を食べたり、
協力してレポートを作ったりお泊まりしたり、何でもないエピソードの一つ一つが
小粋で味わい深いネームによって、なんだか夢の中の出来事の様に感じられます。
周りの人のために色々と気をつかい、無理をする三人。そういった毎日や三人の友情から
人を思いやる大きな優しさが感じられ、読んでいて温かい気持ちになります。
また川原さんの描く女の子の笑顔は無邪気でとても可愛いと思います。
後半の怪力になったり誘拐事件が絡む展開もおもしろいけれど、
前半のまったりした日常で、もっと色んなエピソードが見たかったです。
大袈裟な言い方になるけれど、川原さんの漫画は読んでて「救われる」
とよく感じます。
多くの人が、見逃したり見ないようにしている大事なこと。
子供の頃に感じた不思議な感覚の名残や、個性的な価値観への理解など様々ですが、
そんな思いを川原さんは「さりげなく」描いている様に思います。
同じ思いを描いている漫画家は他にもいるけれど、その絶妙な
「さりげなさ」において、川原さんの右に出る人は滅多にいないと思います。
レナード現象には理由がある (ジェッツコミックス)
絵柄の少女漫画に騙されるなかれ。過去学園物からSF、野球物まで、「少女漫画で何故に?」と思うアイデア・スタイルを送り出してきた川原氏の、久々の新作です。
偏差値の高い進学校を舞台にした、4本の恋愛模様。一言で済ませてしまえばこれに尽きます。が、そこを『普通』で終わらせないのがカワハラ流。ありそうでなさそうな設定をもふんだんに織り込みつつ、それを読者にごく自然に受け入れさせ、読後にほんわりとした気分にさせてくれる、まさにレナード現象のような作風なのです。
本文中に入る作者の突っ込み的語り口はとぼけているようでありながら時に鋭く、思わず「!」となるはず。
今夏は原作漫画も映画化される川原氏の世界、覗いてみませんか?